東北楽天ゴールデンイーグルスの2022シーズンを振り返る

東北楽天ゴールデンイーグルス
2021年のレギュラーシーズンは3位。2位ロッテと対戦したクライマックスシリーズ1ステージで敗退してしまいました。
『譲らない』をスローガンにした今季こそ優勝を、という期待で始まった2022シーズン。
オープン戦では首位を飾りました。もっともオープン戦で調子良くても大事なのはレギュラーシーズンですよね。まぁ、負け続けるよりは勝てて嬉しいのはファン心理ですが。
開幕カードは昨シーズン苦手にしていたロッテ。初戦は惜しくも敗れ、2戦目は雨天中止。そして3戦目は劇的なサヨナラ勝ちを収めました。
3,4月は快進撃が続きました。とにかくこの頃は連敗することがなかったんですよね。首位のソフトバンクにぴったりと2位につけて、4月中盤から首位に立ち、球団新記録の11連勝。しかも11連勝目が田中将大投手によるNPB復帰後初の完封でしたからね。連勝中は9回まで負けていたのに相手クローザーから同点ホームラン、延長でサヨナラ。という劇的な逆転勝利もありました。
本当にこの時期はなにもかもうまくいっていた気がします。新加入の西川選手はじめ、投手も野手も躍動していました。貯金18もあればその後は五分で充分。本気で優勝ありえるよなって思ったものです。
それが頂点から転がり落ちるように成績を落としていくとは思ってもみませんでしたよ。

5月中盤から負けがこみだしたとはいえ、貯金が残っていたのもあって6月中はまだ首位をキープ。去年優勝のオリックス始め、ロッテ、西武が怪我や新型コロナによる選手離脱の影響もあって勝率5割近辺で3位から5位で入れ替わっていたせいもあるでしょう。
しかし、7月からはソフトバンクと西武による首位争い(後にオリックスも加わる)となり、楽天は3位キープが難しくなっていきます。8月からは3位と4位をいったりきたり。9月にやや調子を取り戻し、3連勝で3位復帰したのですが、23日からの8連戦がなんと2勝6敗で4位決定。8連戦前まではなんとか勝率5割以上をキープしていたのに、ついに借金。
終戦すら逆転されて、目の前で優勝の胴上げを見させられるという屈辱で終えました。最終成績は69勝71敗3引き分けでした。

シーズン通して特徴的だったのはカード初戦の弱さ。カード頭にはエースあるいは苦手投手を出されやすい(攻略できない)のが主な理由でしょうか。特に金曜日は19連敗して、ブラックフライデーだの呪われているだと言われていました。
さらにビジター試合では6割くらいの勝率に対し、ホーム開催になると4割程度でした。

他球団を見てみれば、序盤は不調で5位まで順位を落としながらも優れた先発投手陣を活かして夏以降に順位を上げていったオリックス。最終戦までもつれ込みましたが、不利な中で優勝をもぎとったのはお見事。敵ながらあっぱれとしか言いようがありません。
6球団随一の戦力をもって大量離脱者があっても常時強さを見せつけていたソフトバンク楽天投手陣はよく打たれていました。試合を観ていて何度悔しい思いをしたことか。
去年とはうってかわって投手王国となった西武。一発もありましたし、リードされたら7回以降は勝てる気がしませんでした。
西武と似て投手が良く足もあり勝負強さを見せたものの、打撃不調でBクラス暮らしが長かったロッテ。打の助っ人外国人不調が大きく響きました。
BIGBOSS監督が大きな話題にはなり、新たに起用した若手選手が躍動したものの、大型連敗が響いて最下位から浮上することなかった日本ハム。ただシーズン後半はかなり投手力が改善されていたように思います。
ほぼ順位が変動することのなかったソフトバンク日本ハムを除き、先行逃げ切り型の楽天ダッシュのしすぎで息切れして落ちていき、追い上げ型のオリックス・西武にすがりきれなかった感じでしょうか。結局、5位のロッテとも1差でした。

楽天のチーム成績】

2022 2021
得点 533(2位) 532(4位)
失点 522(4位) 507(3位)
得失点差 +11(4位) +25(3位)
打率 .243(3位) .243(3位)
本塁打 101(3位) 108(5位)
盗塁 97(2位) 45(6位)
防御率 3.47(6位) 3.40(4位)

2021と比較してみると、得点失点はあまり差が変わらないように見えますが、順位は得点と失点が逆転していますね。盗塁が倍増して本塁打の順位も上がった反面、防御率は最終的に6位だった日本ハムを下回ってしまいました。得失点差は勝敗順位と変わりません。

シーズン中は大差で勝利する日があるかと思えば、試合序盤で先発が崩れて試合を壊すパターン。あるいはリードしていながら終盤にリリーフがもたずに逆転されるパターン。連敗中はそのどちらかが多かった気がします。
それから天敵左腕の存在も大きかったです。まず思い浮かぶのはオリックス・田嶋投手。ロッテ・小島投手。日本ハム・加藤投手。この3人にはシーズン終盤まで徹底的に抑え込まれました。次点でオリックス・宮城投手、ソフトバンク・和田投手と大関投手、西武・エンス投手あたりでしょうか。
楽天の主力打者は左が多いです。左打者に左腕投手をぶつけるのはセオリーですが、必ずしも左打者が左腕投手を苦手としているとは限らないのですよね。逆に得意とする打者もいるくらい。
しかし、先に挙げた3投手はコントロールが良い上に緩急やコース、タイミング外しの巧さもあるのでしょうか。単発でヒットは出ても、打線が繋がりませんでした。

楽天の各選手について】

投手

二桁勝利をあげたのは去年の2人(則本・瀧中)から則本投手(10勝8敗・3.53)のみ。先発で防御率2点台はなく、もっとも安定していた印象の岸投手(8勝10敗)の3.19が最高というところに防御率悪化を物語っています。
去年は防御率の割には勝ち星に恵まれなかった田中将大投手が9勝するも12敗(3.31)。手術から復活した辛島投手(6勝4敗・3.40)と骨折離脱があった涌井投手(4勝3敗・3.54)で貯金しましたが、30代が多い中で若手先発がふるいませんでした。期待していた早川投手(5勝9敗・3.86)と瀧中投手(2勝9敗・4.62)で負け越したのが痛かったですね。どちらも2年目のジンクスでしょうか。早川投手は復帰してから良くなった気配を感じましたが…。とにかく高齢化が進む先発投手陣に新しい力が必要です。高田孝一・藤平・松井友飛・藤井聖といった1軍に定着できなかった1.5軍的な若手の飛躍、できれば先発助っ人外国人も加えないと来季以降が苦しくなるでしょう。

一時は崩壊しましたが、中継ぎ・リリーフ陣は全体的に頑張っていましたね。セーブ王を獲得した松井裕樹投手(1勝3敗7H32S・1.92)始め、去年に引き続き安定した活躍を見せた西口投手(4勝30H・2.26)は惜しくも最優秀中継ぎのタイトルに及びませんでした。勝ちパターンをになった宋投手(4勝2敗20H・2.61)、さらに育成出身のルーキー・宮森投手(1勝1敗7H1S・1.54)の活躍は大きかったです。新人での連続無失点のNPBタイ記録達成はお見事。あとブセニッツ投手(3勝1敗11H・2.27)も良かったと思いますが、ちょっと冷遇されていたような。一時は調子を崩していた鈴木翔天投手(1勝3敗7H・4.03)も良いピッチングを見せていたので来季は勝ちパターンもしくはロングリリーフで活躍して欲しいですね。ルーキーながら西垣投手(2.66)も頑張っていました。去年西口投手と並んで大活躍した安樂投手(6勝2敗13H1S・4.38)は失点・逆転されていた印象が強くて不安の方が大きかったです。来季復活を期待。

野手

よく言われたようにシーズン序盤の好調は西川選手抜きには語れません。強いチームは1番が固定されているもので、やっと楽天も固定できたとも言われたものです。
しかし、西川選手の低迷と共に楽天の成績も落ちてしまいました。最終的に打率218・7本・37点。さすがに夏以降は出番が減って守備固め・代走要員になっていましたね。ただ、チームの盗塁数が倍増したことから彼の貢献は高かったようです。難があると言われていた守備でも貢献してくれました。打率と比べて出塁率342はさすがです。

中軸は3番浅村選手(252・27本・86点)と4番島内選手(298・14本・77点)が固定されていて、好不調の波こそあれどシーズン通じて活躍してくれたのには感謝しかありません。惜しくも浅村選手が打点王に届かず。島内選手は3割達成ならずとも最多安打で去年の打点王に続いてタイトル獲得はすごい。来季はどんな成績を残してくれるか楽しみです。

2番5番は固定されずに何人か入れ替わりました。小深田選手(267・2本・29点)は21盗塁とチーム一となったのは素晴らしいですが、遊撃守備でエラー(10)を減らしてほしい。もう一人の遊撃手・山崎剛選手(203・3本・13点)にも期待しているんで、シーズン通じて成績を残してほしいです。
「守備の人」と言われていた辰己選手(271・11本・35点)は去年と比べて打撃成績を上げましたね。一回に2本の本塁打がすごく印象に残っています。

去年活躍した選手が何人か序盤不調でしたが、その中で成績を持ち直して勝負強い打撃を見せてくれたのは鈴木大地選手(257・5本・35点)でした。岡島選手と茂木選手は相変わらず守備は良いものの、打率は今一つのままだったのが残念です。

炭谷・太田の2人を差しおいて新人ながら開幕捕手を務め、オリックス戦では田嶋投手から特大弾を放った安田選手。残念ながら怪我と新型コロナで長期離脱してしまいました。来季に期待しましょう。西武の森選手がFA権取得、宣言したらまたしても西武から楽天に移籍?との噂が一部ありますが、安田選手を鍛えて欲しいものです。

打の助っ人外国人は正直去年は期待外れで、今年こそはと期待していたら早々にギッテンス選手が怪我で離脱。カスティーヨ選手の悪夢再びと思われました。
最終的に242・8点。本塁打こそなかったものの、選球眼良くてシェアな打撃してくれそう。実は出塁率365と西川選手を上回っているのにびっくり(チーム3位)。
マルモレホス選手(208・7本・28点)は不調となって2軍落ちして後半ほとんど出番なかったのですが、そんなに悪い印象はないんですよね。左腕に強いし。今季のパの外国人野手は軒並みホームランを打てていないので、相対的には悪くない印象です。
2人ともスタメンで使えばそれなりに成績伸びそう気がします。開幕から使い続ければギッテンス選手は打率、マルモレホス選手は本塁打と打点が上がるんじゃないかと。残留した上でプラス一人獲得して欲しいところ。
ただ、ギッテンス選手はファースト守備が良さそうなのに対して、マルモレホス選手の外野守備は不安なので起用が難しいところでしょうか。

その他に左打者偏重。ベテラン・中堅重用し過ぎで若手が定着できない問題があります。
投手にも共通しているのですが、打者も2軍では強いが1軍ではさっぱり。そんな中で光っていたのが武藤選手(250・1本・9点)と渡邊佳明選手(242・1本・17点)……なんですが足りない。黒川・小郷選手。さらにはオコエ選手、トレード移籍してきた伊藤選手含めて右打者が覚醒してくれって願っています。
最後に銀次選手、前半は代打の切り札として貢献してくれましたが、コロナ感染復帰後は絶不調でしたね。狙い通りにいかずに平凡なレフトフライかゴロアウトばかり。得意のバットコントロールを発揮できていませんでした。大丈夫かな…?

【采配・試合運びなど】

現在の石井監督が2018年にGM就任して以降、戦力の底上げがされてきたと思います。そこは明らかに石井氏の功績ですね。
2018年シーズンに最下位となりましたが、翌年以降は3位・4位・3位・4位。少なくともシーズン前半は首位争いはしています。ただしシーズン後半には勢いが落ちてCS争いがやっと。一度落ちると這い上がるのが難しいんですよね。その代わり、二桁借金を抱えるような成績には陥っていません。
上位となったチームと比べると、投手野手ともずば抜けた選手(例えばオリックスの山本・吉田、西武の高橋・山川)はいません。全体的な戦力でもソフトバンクには劣るでしょうが、決して弱くはなく上位を狙えると思うのですよね。
要は勝ち続けるための起用や策が不足していた気がします。一度うまくいった時の打順を工夫なく使い続ける。選手が不調に陥った場合、ベテラン中堅はしばらく試合に出すも、若手は早めに見切りをつけて2軍に落とす。実績主義に凝り固まったせいで、大化けするような選手がなかなか出てきませんでした。

満塁を何度も潰していたように残塁が多かったです。四球や安打は出ても、長打が出にくかった印象。スクイズ失敗や走塁のミスも目立ちました。
良かった点は盗塁が増えたせいもあってか相手投手(特に外国人)や守備を掻きまわして得点に繋げることができました。
12球団でもっとも少ないエラー数(49)を記録したように守備は良かったです。辰己・西川・岡島選手はじめ外野は堅くて安心して見ていられましたね。何度ファインプレーでピンチを救っていたことでしょうか。
ただ、先発投手による本塁打被弾はなんとかしてほしいものですね。せっかく好投していても、下位打者に一発浴びてそのまま決勝点という試合が何度かありました。
2021シーズンもそうでしたが、30代の実績ある投手は立ち上がりから安定している反面、疲労などにより炎上することが度々あります。ローテーション間隔を開けながら若手と併用するなど起用方法を考えてもらった方が良いと素人ながら考えます。

石井監督は続投。真喜志ヘッドコーチは辞任との報道が出ました。今季楽天の成績が落ちていくにつれて石井監督を批判する声はネット上で高まっていった気がします。
監督が続行する以上はよりよい指導・采配できるコーチを迎えて来季こそは優勝目指して欲しいものです。


※順位推移や成績などはこちらを参照しました。
プロ野球Freak https://baseball-freak.com/
スポーツナビ(YAHOO JAPAN!) https://baseball.yahoo.co.jp/npb/