13期・12冊目 『旭日、遥かなり8』

旭日、遥かなり8 (C・NOVELS)

旭日、遥かなり8 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

戦艦「伊勢」「山城」の轟沈と引き替えに、連合艦隊は最重要拠点であるトラック環礁の防衛に成功した。しかし日本艦隊は、敵機動部隊への索敵の遅れから、引き続き防戦を強いられる。対空装備を強化した旗艦「大和」が奮戦する中、ついに索敵機「彩雲」が米空母を発見。皇国の窮地を救うべく、新型戦闘機「零戦三三型」と艦上爆撃機「彗星」が奇襲に向かう―。一方、米太平洋艦隊は英艦隊と連携し艦隊決戦の構えを取る。「大和」「武蔵」と米英両国の最強戦艦、太平洋の覇権を懸けた最終決戦の行方は!白熱の戦記巨編、ここに完結。

トラック基地に対する苛烈な空襲および水上艦隊による夜間砲撃を終えたところで、航空機の消耗が激しい米機動部隊はいったん東方に引きました。後方から控えの航空機隊を乗せた護衛空母が駆けつけており、合流して今度こそ殲滅しようというのです。
日本の機動部隊はトラック攻防には間に合わなかったものの、航空機の補充が行われる前に敵を叩くべく索敵機を放つも、米軍はレーダーを生かして近づこうとする偵察機をことごとく撃墜しており、なかなか居所を掴ませません。
ようやく一機の彩雲が米機動部隊を補足するも、今から出撃していたら、帰投は日没後になってしまい、母艦に戻れなくなる機が増えることが懸念されます。
せっかく掴んだチャンスを逃さずにすぐに攻撃に出るか、それとも翌朝に仕切り直すか、艦隊を率いる角田司令は判断を迫られるのでした。


さすがに最終巻でボロ負けすることはあるいまいと思いつつも、先にどちらが見つけるかによって勝負の分かれ目となるだけに手に汗を握る展開。
そしてようやく攻撃隊が空母を含む艦隊を発見しても、上空直掩の戦闘機や猛烈な対空砲火を潜り抜けて射点につくのも大変なことでした。
ここでは米機動部隊の司令ミッチャーの判断が(彼らにとっては)裏目と出てしまい、爆弾や燃料を満載した航空機が並べられたところに彗星による急降下爆弾が落下。爆撃を受けた空母は次々と大炎上。
まさに史実のミッドウェー海戦を逆にやらせたようなもので、頑丈でタフネスぶりを発揮したエセックス級空母がまとめて沈められるという珍しい結果となりましたね。
残った空母群による反撃によって日本軍も正規空母が撃沈されるも結果的に大勝利を得て、次は戦艦を主役とした決戦。
隻数こそ近いものの、英米側はアイオワ級キングジョージ?世級など最新鋭の艦を用意したのに対し、日本側は大和・武蔵以外は旧式で砲威力に劣ります。
ここでも内容的には痛み分けに近いものの、分散した英米艦隊を各個撃破する形になったのと、46cm主砲を持つ大和・武蔵が強さを発揮して辛うじて勝利をもぎ取ったと言えましょう。
一歩間違えたら、逆に日本側が包囲殲滅されていた可能性*1もありましたし、本当に最後までハラハラさせられる内容ではありました。


海戦にて日本が勝利を得て、その結果をもって講和を進めていくという流れの中で世界情勢としてはソ連が崩壊。独ロはウラル山脈を境に領土を分かつことになりましたが、旧領回復を悲願とするロシアにとっては臥薪嘗胆の思いに近く、将来的に敵対する可能性が高い。そこで日本としては地勢的ロシアに近く、日ロが四国同盟から脱退。
日本と戦う理由を失ったアメリカとしても、欧州を席巻して強大になったドイツをこれから相手取る必要があり、対日講和への流れとなるわけです。
今までの著者のシリーズで見てきたような流れですな。
途中まで勝利してきたのに敗戦に近い講和条件とか、国内で和平反対派が騒ぎ出すも天皇の鶴の一声で収束するのも同じ、パターンと化しています。
まぁ、それ以外だと内戦もしくは史実に近い無条件敗北のどちらかとなるのが目に見えていますが…。
今回も迫力ある空戦と海戦の描写、ヒトラー総統と山下大使との会話、日本を叩きのめしたくて悔しがるルーズベルト大統領と諫める側近など、そこかしこで楽しめるのですが、やはり全体的には流れが読めてしまうのです。


あとがきでは次回作の構想らしいことが書かれていました。
最初からif世界で背景説明は少しにとどめ、戦術に限定的した短めの内容(3巻以内)もたまにはいいんじゃないかと思いますね。

*1:さすがにここでそれはないだろうと思いつつも、危ない描写があるので安心はできない