11期・24、25冊目『海王(上・下)』

海王〈上〉

海王〈上〉

海王〈下〉

海王〈下〉

内容(「BOOK」データベースより)

剣豪将軍として名高き足利第十三代将軍・義輝が松永弾正の奸計により斃れてから十余年後―。ひとりの少年が、信長の戦勝に沸く堺の街に姿を現した。少年の名は、海王。かつて大武装船団を率いて東シナ海を席捲した倭寇の大頭目・五峰王直を祖父として育った少年は、自らが将軍義輝の遺児であり、剣に天賦の才を持つことを知らない。だが運命は海王を、かつて義輝を愛した人々、そして信長ら天下争奪を目指す男たちの元へと誘う。

最初にノベルズ版の『剣豪将軍義輝』を読んだのはもう20年くらい前でしょうか。
征夷大将軍という高い地位にも関わらず剣の道を選び、最後は何振りもの名剣を奮って自刃したという強烈な印象を与える人物。
それを架空の人物やエピソードを多数交えて描いた内容に魅せられたものでした。
その続編ということで購入したものの、実は何年も本棚に飾ったままでした。


主人公は海王(ハイワン)という少年。
かつて倭寇の大頭目として九州沿岸で名を馳せた五峰王直の孫・梅花(メイファ)の息子として育てられていて、博多の豪商・神谷紹策*1の次男である顎十郎の親友として、海商の道を歩んでいたのでした。
本人には秘せられていたのですが、実は処刑直後の義輝の愛妾で臨月だった小侍従の腹より九条植道の秘術により取りだされてひっそりと匿われていたという設定。


堺を訪れていたハイワンは顎十郎と共にたまたま織田信長を狙撃しようとした犯人を妨げたことをきっかけに本人の意思とは関係なく、義輝ゆかりの戦国武将たちと関わることになり、また復讐に燃える王直の元部下・ヂャオファロン一味、それに前作からの因縁をひきずった熊鷹といったアクの強い者たちに狙われてゆく。
そうした戦いの日々が父親譲りの剣の才能、それに将軍血筋としての大器を開花させてゆくのでした。


続編であるだけに『剣豪将軍義輝』で義輝と強く関わった人々(浮橋やメイファ、熊鷹など)の顛末が描かれること、信長亡き後の天下取りの歴史にハイワンの存在がうまく絡ませて描かれているので、歴史的冒険活劇としてそこそこ楽しめる内容です。
そこそこ、としたのはあまりにも長すぎて冗長的になっていること。
ハイワンの成長に合わせて信長〜秀吉の天下取りの過程を描くため、必要性はあったのかもしれませんが、ハイワンたちの戦いがパターン化(名もなき忍びの配下たちが蹂躙される。倒されたと思っていた悪役が実は生き延びていて何度も迫ってくる)してきて飽きがきます。九条植道が万能過ぎてなんでもアリになってますしねぇ。
最後に長々と続いていた小牧・長久手の戦を意外な結末で収めたなーと思っていたら、唐突に表れたニューフェイスによってあっけなく死んだあの化け物。呆気にとられました。


ここまで話を広げないで、海商にテーマを絞るなど短くまとめた方がすっきりして良かったのではないかと思いましたね。
まぁ著者がよほど足利義輝を好きなのだなぁというのは充分伝わってはきましたね。

*1:長男は「博多の三傑」と称される神屋宗湛