11期・26冊目『精霊幻想記4 悠久の君』

精霊幻想記 4.悠久の君 (HJ文庫)

精霊幻想記 4.悠久の君 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

両親の故郷カラスキを出立したその足で、ラティーファたちの待つ精霊の里を訪れたリオ。里の民たちから熱烈な歓待を受けた後、情報収集目的でシュトラール地方へと向かったリオは、その道中に見かけた巨大な光の柱に導かれ、奴隷にされかけていた三人の男女を助けるのだが―なんとその中の一人は、リオの前世である天川春人の初恋の少女で!?

前巻で両親の故郷カラスキにて、リオとしての自身のルーツを知り、再会を期して再び精霊の里に戻ってきたところから始まります。
ふと思えば、精霊の里を出発してから実に1年以上は経っているのですね。
冒頭、久しぶりの再会で互いの成長ぶりを和気あいあいに語り合う場面があって、確かにイラストを見てもラティーファ始めとする獣人娘たちは初登場時に比べるとだいぶ大人っぽく書かれているのがわかりますな。


今回の目玉は何と言っても突如シュトラール地方に出現した六柱の光に合わせて登場する人物たち。
それは伝説の勇者召喚であると街でも話題になっていて、実際にその一人である坂田弘明はフローラの元に現代日本より召喚された経緯が描かれています。
そしてその巻き添えとなったのか、気づいたら見知らぬ草原に立っていた三人の少年少女。*1
奴隷商に捕まったところを内なる声に導かれてやってきたリオが無事救助するという流れ。
ちなみにこの時、リオは護衛の傭兵たちの士気を挫くために初めて人を殺すのですが、それが後々心理的な枷になってしまうのが、彼の人の好さなんでしょうか。


救助した三人は、前世天川春人の想い人だった美春、離婚して離れ離れになった妹の亜紀、その弟である雅人。
雅人以外は天川春人とは感情的にいろいろと深い事情があることが書かれていて、ハルトと偽名を名乗ったリオは離れていたためにまったく知らないこと。
そしてリオが前世で亡くなったのとは数年ずれていて、今世での生もある転生者と転移者の違いが心理的な距離感を生んでいる感じもさせています。
そういったわけで、主人公リオとしては世界を超えて奇跡的に再会できた美春なのに、素直にその想いを伝えられなくて、でも保護者的立場のハルトとしては結構仲良くふるまうが微妙に他人行儀。
心温まるも、読んでいる方ももどかしくて複雑な思いにかられます。
モテ系不憫主人公というのでしょうか。
あと忘れちゃいけない精霊アイシア
アイシアは登場の仕方が(リオにとっては)衝撃的だけど、空気も読める(たぶん)できる子。いいキャラしてます。


三人および召喚勇者とは別にレイス(配下の魔物)との接触があったのは同じなのですが、Web版ですと、召喚勇者との出会いから主人公最大の鬱展開へと進むところが、書籍版の終わり間際で大きく違う展開を見せます。
Web版では以後ラティーファはまったく出番がなくなってしまうのですが、書籍版では美春たち三人を精霊の里で保護してもらう展開となったのが驚き。
前世も今世もリオへの想いを抱いており、リオを兄以上に慕うラティーファが美春たちとの出会いによってどういった影響を及ぼすのか?
この流れはかなりワクワクさせられるところです。
次巻はいよいよセリア先生のターンですが、これもWebとは大いに違う展開になりそう。
もしかしたらリオとの関係も曖昧なままでは終わらない?と思わせる気がして、今後が楽しみになってきました。

*1:前巻のエピローグ