10期・2冊目 『ヒート 地球が熱くなる日』

ヒート―地球が熱くなる日 (1978年) (ダイヤブックス)

ヒート―地球が熱くなる日 (1978年) (ダイヤブックス)

地球温暖化のメカニズム
現在、地球の平均気温は14℃前後ですが、もし大気中に水蒸気、二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスがなければ、マイナス19℃くらいになります。太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。
近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めています。これが地球温暖化です。
http://www.jccca.org/global_warming/knowledge/kno02.html

主人公ローレンス・ピックは優秀な技術者であると同時に科学者であり、災害に対する国の総合的な対策機関CRISESの副所長。だが過去に結婚に失敗があって以来女性関係に臆病になってしまったこと、それに事なかれ主義の所長と災害対策について衝突することが悩みの種ということでした。
そんな中でアメリカで季節外れの竜巻被害を始めとして異常気象が続き、何人かの気象学者からの意見を聞いて、大規模な災害が起こる予兆ではないかと危惧します。
そこで各分野の科学者を招いてプロジェクトチームを結成、それぞれの調査と所内のコンピュータで分析した、異様な温暖化現象が起こることを確信します。
そのことを所長に具申するのですが、政治的配慮からそれを握りつぶされた上に、徹底した封殺攻撃を受けて職を失い逃げ出す羽目になってしまうのです。
しかし現実には高温と低温を繰り返す異常気象と巨大ハリケーンの襲来などよってアメリカは自然災害に翻弄された上に、ピックが予言したかつてない高温化が始まってしまうのでした。


作品序盤でも描かれているように1970年代までは地球は寒冷化に向かっていると信じられていたのですが、その根拠は乏しく、後に世界的な研究発表の場で実は地球は温暖化していると主張されたこと、それが報道されて世間一般に広まるようになったのは1980年代末頃からだそうです。
wikipedia:地球温暖化
今でこそポピュラーすぎるくらいのテーマですが、1978年に発行された本作は確実に時代を先取りした内容となっています。
温暖化に聞きなれた現代のわれわれにとってはショッキング度は少ないですが、その内容にはじわじわくる怖さがありますね。
少しずつ気温が上がるのではなく、一気に天候バランスが崩れた結果、人々が異常気象に振り回されるさまがやけにリアル。
ハリケーンによる災害被害には協力して立ち向かっていた人々も最高気温四十度後半が続く日々には脱帽。
当然のことながら仕事など手につかなくなってしまうし、アスファルトがぐずぐずに溶けて道路は使い物にならなくなるなど現代社会はたちゆかなくなります。異様な暑さは人を無気力に陥らせてしまうんですね。
そんな中で急遽大統領に呼び出されたピックは徹底したエネルギー抑制政策と奇想天外な手段でこの温暖化現象を解決しようとするわけで、果たしてうまくいくかどうかにハラハラ。
今の時代からすれば地味に思われるテーマですが、意外と楽しめた作品でした。