8期・15冊目 『群龍の海2』

内容(「BOOK」データベースより)
昭和16年12月に生起した東シナ海海戦(米側呼称:バトル・オブ・ミヤコ・アイランド)で見るも無残な敗北を喫した米海軍は、雪辱を期して「デラウェア級」をしのぐ巨大新鋭戦艦「コネチカット級」2隻を竣工させ、太平洋艦隊に編入した。昭和17年5月5日、米太平洋艦隊はハワイ・真珠湾を出港する。目指すは、日本海軍が主だった艦隊と基地航空隊を集結させているトラック環礁だ。中部太平洋制海権をめぐって激突する日本機動部隊と米太平洋艦隊!日本は“航空要塞”トラックを死守できるのか!?―。

徹底した航空主兵路線に切り替えた日本と大艦主砲主義をひた走るアメリカとの戦いを描くシリーズ2巻です。
ちらっと他国の情勢が書かれていましたが、欧州は英仏・独・ソの冷戦三すくみ状態。
イギリスは太平洋戦線には中立であり、日本との関係は良好で電探・無線などの技術給与を受けている様子。
陸戦の状況が無いのでわからないのですが、中国大陸はともかく東南アジアへの進軍は無くて、関係が悪化したアメリカの代わりに蘭印など南方資源帯から石油他の資源を輸入していると思われます。
そして日米の戦端が開かれた以上、シーレーンの障害となるフィリピンを攻略、後は中部太平洋を巡る日米のガチバトルとして描かれていくのでしょう。
いささか強引ですが、パナマ運河の制限がとっぱらわれて、続々と巨大戦艦を建造し始めたアメリカの砲艦外交はいわば海軍力を持ったドイツ的存在と捉えられますね。


開戦当初の敗北の雪辱を期して、50口径40cmの4連装3基の主砲を前部に配置し、集中装甲によってこの上なく防御力を高めた巨大新鋭戦艦「コネチカット級」2隻を押し立てて、要衝トラックに来寇した米軍。
対して3群の機動部隊とトラックの基地航空兵力にて迎え撃つ日本軍との戦いが中心になっています。
米軍の欺瞞作戦があったものの、序盤の航空戦に関しては日本軍優位。
これは米軍の新規空母が軽空母インディペンデンス級のみという中途半端さが関係してますね。今後月刊エセックスは無く、航空機の開発が史実より遅れるなどで日本の航空優位を保つのかと想像(期待)。*1
トラックの基地を潰しきれなかった米軍は夜になって砲撃でカタをつけようとするも、日本軍はベテランパイロットを選抜しての夜間雷撃と潜水艦、そして環礁の中から水雷戦隊が出撃し、あの手この手で対抗。
このあたりの小が大を相手に健気に戦う描写は著者の真骨頂ですね。


結局、日本軍の損害は多かったものの、2戦艦が損傷した米艦隊は撤退し、かろうじてトラックは守られます。
コネチカット級戦艦は魚雷数本受けても沈没はせず、自信を深めたアメリカは更に強力な戦艦を就役させ、沈没した正規空母の代替建造は無いことからますます加速する大艦主砲主義。
それに対して日本は変わらず航空主兵で対抗していくということなんでしょうが、今回急降下爆撃がさほど効果あげなかったことから、対戦艦用に新兵器か何か考えても良さそうですが。
それにしても最期に滅多にない空母と戦艦の遭遇戦を発生させたのは蛇足のように思えてしょうがなかったです。
失わせるにはあまりに惜しい艦と人物ですが、改めて大艦主砲主義と決別させるための事件として必要だったんかなぁ。

*1:TBFアベンジャーはほぼ史実通りに登場したが