7期・79冊目 『復活の条件』

復活の条件 (光文社文庫)

復活の条件 (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
平凡ながらも幸福な生活を送っていた住宅内装品メーカー社員の石坂隆一は、ある日、迷い込んで来た野良猫から人生の歯車が大きく狂いはじめる。一家の飼い猫となったミーの毒殺殺害を契機に娘の家出、息子の交通事故死、会社の倒産、妻との離婚…家族の不幸が津波のように押し寄せる。どん底状態の石坂は、夢の中で亡き母から聞いた「人生をリセットする方法」を実践すると、二年前の家族団欒が目の前に。幸福の崩壊を阻止するため、石坂の絶望的な戦いが始まる―。狂い出した歯車…家族を救うため、巨悪に立ち向かう男!森村エンタテインメントワールドの極致。

森村誠一は20年くらい前までよく読んでいたものです。
このたび、不幸のどん底に突き落とされたサラリーマンがタイムスリップして人生をやり直すという設定に惹かれて久しぶりに氏の著作を読んでみました。


迷い込んできた野良猫を飼い始めてから石坂家は幸福の絶頂にあり、ミーと名付けたこの猫が幸福を招き入れてきてくれたと石坂隆一は本気で思い込みます。
しかし、ある日ミーが毒殺されてからというものの、家族は離散・会社は倒産・火事で家さえ失うといった、これでもか!というくらいの不幸が石坂の身に押し寄せます。
絶望にあえぐ石坂はある晩に亡き母の声を聞き、リセットする方法に縋るのです。
それは2年前、ミーが健在でまだ家族が幸福だった頃に戻ること。
まず手始めにミーが毒殺されることを防ぐこと、そして家族がバラバラになるきっかけとなった出来事を未然に防ぐこと。人生のやり直しを賭けた石坂の戦いが始まります。


起こりえた災難を防ぐために直接的な行動(簡単に言えば出かけさせないなど)を取った結果、石坂は平穏な日々を維持することができて安堵するわけですが、その代わりにオリジナル人生には無かった人物との出会いや事件が発生したりします。
それがゆくゆくは石坂にとっての最大の試練・会社の倒産、その直接的な原因である内部で巣食う巨悪に繋がってゆく。
要は一度は人生に敗れたはずのサラリーマンが会社を救うヒーローになるという、ドラクエとかの中世風王国の舞台を会社に置き換えた現代ファンタジー物語*1と言えるかもしれない。その都合良すぎる展開には思わず苦笑い。我が家の平和を救うためだったのに、後半からまるきり会社中心になってしまってその後の家族がまったく出てこない(最初の危機さえ回避すればもうどうでもいいのか?)のはどうなんでしょうねぇ。
そのままめでたくハッピーエンドかと思いきや、意外な結末となっててびっくり。*2
最後はなんだか虚しさを感じてしまいました。

*1:黒幕の大臣に騙されて国を傾けた王様と不幸な姫様といった配役を会社組織に置き換えてある

*2:ネタバレすると、一瞬夢オチかと思ったら、微妙に違う時間軸の過去に戻ってしまってて、パラレルワールドの漂流者となってしまう