9期・16冊目 『回廊封鎖』

回廊封鎖

回廊封鎖

内容紹介
巨大ビルの中で、悲劇の幕があがる!
3つの殺人事件には共通点があった。被害者はみな大手消費者金融の元社員であること、処刑のような殺害方法…。久保田刑事は捜査する中で、意外な犯人像に迫る。事件の連鎖は止められるのか!?

消費者金融に勤める男性が続けて殺害されます。
いずれも一見自殺を装っているものの、他殺であることは明白であり、処刑とも見られるふしがありました。
さらに被害者に共通するのは倒産した大手消費者金融・紅鶴の元社員であったことに目を付けた久保田刑事はグレーゾーンと言われる高利率な融資で悪辣な取り立てを行っていた紅鶴に今もなお恨みを持つ者の犯行を疑います。
そして、港区で零細清掃業者・重原サポートは社長の重原を始め、借金のために職と家族を失い自己破産やホームレスなどを経て社会復帰した仲間たちが集う。
堅実な仕事ぶりの陰には表沙汰にできない裏の顔があったのです。


真面目に社会生活を送ってきた人がふとしたきっかけで借金地獄にはまり、何もかも失い転落してしまう。
利息の過払い訴訟を起こすも会社が建前上倒産したために経営者一族の勝ち逃げとなっているわけで、そこでかつて借金に苦しめられた人たちが非合法の復讐計画を起こしたという筋書きになっています。
そんな折に紅鶴創業者の長男で専務を務めていた紅林伸男が現在のビジネスの関係で香港から東京に来ることがわかり、突然降ってわいたチャンスに重原らは色めき立ち、巨大複合ビルを舞台にした攻防劇がクライマックスとなる展開です。


清掃業者ならではの警備の隙をついた襲撃計画、素人集団vsプロのボディガード、独自の勘で真実に迫る刑事、などなど面白味のある要素がふんだんに盛り込まれ、飽きさせることなく読めます、途中までは。
素材としては素晴らしかったのに、終盤はばたばたしちゃって、あっけない終わり方したなぁというのが率直な感想でしたね。
三者としての久保田刑事も肝心な場面ではあっさり退場させられたし。
紅鶴が武富士がモデルになっているのは一目瞭然なのですが、無理に現実に近づける必要は無かったのではと思います。
紅林伸男が復讐のラスボスとしては根拠やインパクトの面で弱いです。
社長がのうのうと生き延びていてその隠し財産を狙うとか、実は元社員が仲間で因縁や葛藤があるとか設定を変えれば良かったのではと素人ながら考えてしまいましたね。