5期・2冊目 『ナイトブリード』

内容(「BOOK」データベースより)
今から五年前、日本全土を襲った大地震。誰もが“感じた”地震だったが、不思議なことに何も被害はなかった。幻覚地震と呼ばれるその地震の後、今まで目に見えなかったものが、日本各地に出現するようになる。魔物、妖怪、物の怪などが現実の世界に現れたのだ。あるものは、徒党を組んで人を襲い、あるものは、人に憑依して人肉を喰らう。妖怪と人間の怪異な世界を描く、書き下ろし長篇スプラッター・ホラー。

幻覚地震によって妖怪を始めとするこの世ならざる魔物の類が日本中にあふれ出てきたという、ダークファンタジーな世界なんですが、友成純一の手にかかるとダークさと狂気ばかりが突出し、血肉の濃度が異様に高まりますな。
地面から沸いてくる鬼たち。空を飛ぶ龍。海坊主・・・etc。妖怪たちの描写がたまらない。圧巻は群集の中に登場して殺戮を尽くす濡女(磯女)と牛鬼でしょう。まるで人間を虫けらのように弄び殺しまくる。それは人間が他の生き物に対して行っていることの裏返しなんでしょうか。その死に様を執拗なまでに描写するのが著者らしさですね。
子供の頃に水木しげるの妖怪本を読んだ私としては、むしろ各所に出現してちょっとした悪戯をする妖怪たちが愉快でした。


環境への対応に優れるのか、それとも諦めが早いのか、5年の間に妖怪たちと同居することに慣れてしまい、以前より秩序や日常が崩れつつも、人々は今までどおりの生活を続ける。*1そんな中で宗教団体の抗争を軸として、人間ながら魔の側に染まってしまっている人間たちが主に書かれています。
ヒロイン(?)のレイ、彼女と対立する団体の教祖・鬼婆、その孫で異能力者・ハッサン、鬼殺し・頼光*2、マッドサイエンスト・水名本博士といった、ろくでもない人物ばかりです(笑)
彼らが今後いったいどうなっていくのか、変に中途半端な段階で終わったなぁと思ったら、<第1部完>だったのですね。しかし10年経っても続編は出てないところを見ると、打ち切りの可能性大です。世界観としては面白いのに勿体無いなぁ。

*1:もっとも、昔と同じように夜は魔物たちの時間となりつつある

*2:たぶん、源頼光から名を取ったと思われる