12期・40冊目 『食い詰め傭兵の幻想奇譚3』

食い詰め傭兵の幻想奇譚 3 (HJ NOVELS)

食い詰め傭兵の幻想奇譚 3 (HJ NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

探していたラピスの身体の一部があるという情報を掴んだロレンとラピスは、冒険者養成学校の卒業試験同行依頼を引き受けることになった。卒業生だというクラース達と再会し、学校へと赴いたロレン達は、学生パーティと目的の迷宮へと潜りはじめる。しかし、そこに待っていたのはモンスターの全く出現しない不審な迷宮で…これは、新米冒険者に転職した、凄腕の元傭兵の冒険譚である―。

本当は魔族であるラピスが一介の神官として冒険者になっているのは世間を知るための修行であったのですが、その力を発揮できないよう親によって四肢と眼を偽物に代えられるという尋常でない制限がありました。
最近になって、ラピスは左腕が隠されていた場所を突き止めたはいいものの、それは関係者以外には入れない冒険者養成学校の地下迷宮の中。
そこで、ちょうど学校から卒業試験同行依頼が出ていることから、依頼失敗続きで借金が増すばかりのロレンのためにも引き受けることになるのでした。試験監督で迷宮に潜るついでに機会を見て左腕を取ってこようというわけです。


冒険者養成学校へ向かう馬車の中でクラース一行と再会。なんでも卒業生である彼も同じ依頼を受けたのだとか。
前回の依頼(2巻)での顛末を通じて、どこか丸くなったクラースに軽い驚きを感じるも、狭い馬車の中でアンジェと二人だけの世界を作るに至っては、ラピスにより強制的に催眠の術をかけられてしまうのでした。
学校に到着するや、女生徒に囲まれて大人気のクラースに呆れつつ、監督役を引き受けた生徒パーティと顔合わせ。彼らはつい先日、ガラの悪い冒険者たちに絡まれていたのをロレンが救ったばかり。
監督を引き受けて実際に迷宮に潜ってみると、弱ったゴブリンを倒すにも時間がかかったり、危機感が足りなかったりと、なんとも彼らの頼りなさが目立つ。
しかし、不思議と魔物が出現しないまま、一行はどんどん下層へと進んでいってしまうのでした。


前巻で死の王(ノーライフキング)と化したシェーナのアストラル体を自身に同化させたことにより、小さくなった彼女が自分だけ見えるようになり、暗視などその能力も得てしまうことになったロレン。
今のところ、どんな態度を示すかわからないのでラピスには秘密なのですが、シェーナとのやりとりがなんとも微笑ましいですね。
それで今回は非常に楽そうに見えた依頼ですが、なぜかロレンが関わると、難易度が急激に高まるジンクス。
1巻はゴブリン、2巻はゾンビ、そして今回はスライムというわけで、通常はどれも雑魚扱いの魔物なのに、尋常ならざる物量となって押し寄せて、犠牲者が出てしまう。
無事だったクラースたちと合流するも、さしものロレンたちも必死になって逃げることに。
どうしてこう毎回苦労させられるのか(笑)


さすがに今回はひょろりと滅んだ噂はたたないでしょうが、またしても無理しすぎて入院して借金が嵩むオチ。ロレンが人生に達観するようになるのもむべなるかな。
あ、書籍化でラピス視点のエピローグが入るのはいいですね。
邪神の存在やら、ロレンが能力的に人間離れつつあるところとか、今後の繋ぎとなった観があります。
そういや、この結末をWeb版で読んだ際は迷宮の底に封じられていた怠惰の邪神は足止めのスライムを放ってすぐに逃げてしまったので、この後どうなるのだろうと気になったもの。
その後、長らく縁は無かったのですが、Web版ではようやく再会することになるかもしれません(10/2時点)。
食い詰め傭兵の幻想奇譚