4期・16冊目『ドイツ機甲師団―電撃戦の立役者 第二次世界大戦ブックス(15)』

日清・日露から2度の世界大戦など近現代の主な戦争を時期別に取り上げ、写真をふんだんに用いたビジュアルブックスが中学の図書室にありまして、一時期夢中になって読んでいたことがあります。
たまたま古本市で見かけた本書は当時の気持ちを思い出さられたわけです。
それにしても、戦争の道具であっても兵器は男の子回路を作動させるモノ*1であり、しかも枢軸側が人気で、機甲師団の主役たる戦車といえばドイツ。
そのドイツ機甲師団の歴史をなぞった内容となっています。


そもそも戦車の歴史は第一次世界大戦のマーク1(イギリス)に始まり、今後の陸戦の行く末を握る新兵器として注目したのがきっかけ。当然列強各国でも開発は始まったものの、基本的に歩兵の補助的存在と見做されるのが主流で、そのもの自体の攻撃力としては疑問視されたいたのが実情のようです。このへんは兵器としての航空機と似ていますね。
第一次世界大戦後、戦車を集中して運用する考えは未だ少数派*2でしたが、ドイツにおいては権力を握ったヒトラーの注目を得たことでドイツ機甲師団として歩みが始まったわけです。このあたり考えてみると、良くも悪くもヒトラーと運命を共にしたわけですね。


ドイツ戦車と言えば、ティーゲル・パンテルに代表されるような強力無比なイメージがありますが、実際読んでみると、初期の主力である1〜3号戦車*3は連合軍の所持していたものと比べて優れた性能であったわけはなく、むしろ砲や装甲が劣っていた部分があったりしていました。
大戦前期においてドイツ陸軍がその強さを発揮したのは、空軍を含む各兵科との連携の巧さ、高い機動性を利用して包囲し敵集団を無力化するなど洗練された戦術があり、そして各戦車兵・士官の高い連度であったことがわかります。まさにドイツの強さは機甲師団の強さでありました。


しかし対ソ線の敗北あたりから人材・資材の損失が増大しはじめ、凋落に歯止めがきかくなくなります。撤退を認めないヒトラーの厳命と燃料不足によって本来の機動力を封じられ、防御に徹することしかできないドイツの戦車部隊。それに対して、相手のお株を奪うような戦術の妙(と膨大な物量)を見せて進撃する連合軍戦車部隊の記述が非常に印象的でした。


最後に著者は戦車を勇者の鉄棺と称しています。戦車においては戦車長を除いてほとんどの乗員は閉ざされた空間の中で死の恐怖と戦いつつ各々の役割を果たして戦っていた。そんな戦車兵たちをエリート部隊として作りあげ、きわめて高い攻撃力と機動力をもってヨーロッパを席巻したドイツの機甲師団はどうしても惹かれる存在ではありますね。

*1:ガンプラの次に作ったプラモデル

*2:ドイツにおける機甲師団生みの親であるグーデリアンは前半の主役といっていいくらい何度も名前が出てくる

*3:ただし3号とその後の4号はバリエーションが多く、後期型は装甲・砲ともに改善されている