3期・96冊目 『粘膜人間』

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

粘膜人間 (角川ホラー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「弟を殺そう」―身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐太は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか?そして待ち受ける凄絶な運命とは…。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。

いやぁタイトルからして特異な雰囲気が伝わってきていたのですが、予想に違わない内容でした。奇妙奇天烈なキャラクター描写に加えて予測のつかないストーリー展開。ぐちゃぐちゃでどろどろの迫力ある残酷描写と幻想的な世界観。これはまさに読む人を選ぶ劇薬本と言えるでしょうな。
登場人物でいえば雷太とモモ太の異形ぶりが際立っているですが、仇敵同士であったはずの二人が出会ってから奇妙な友情をはぐくませるあたりはユーモアさも感じさせます。事情が判明して二人が戦いに臨む場面で幕を下ろすのもいい感じでした。


1章が暴力的で手がつけられない弟・雷太の殺害を目論み、村のはずれに棲む異形の者(河童)に協力を依頼する兄弟・利一と祐二の話。
2章は兄のせいで非国民の烙印を押された少女・清美の過去と、そこに闖入してきた祐二の話。
3章は殺されかけたせいで記憶を無くした雷太と河童のモモ太が知り合い、記憶を取り戻そうとする話。
一応、話は連続しているのですが、前の章の人物が劇的な変化をしてしまうあたりは驚かされます。ただ2章の終わりの清美のエピソードが断絶したまま最後を迎えるのがちょっと引っかかりましたね。失踪した雷太の母親の件もそうですが、本筋とは別に気になる伏線をもう少しなんとかしてほしかった気がします。