3期・39冊目 『戦闘妖精・雪風(改) 』

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった―。発表から20年、緻密な加筆訂正と新解説・新装幀でおくる改訂新版。

一機の電子戦闘機のパイロットの主人公の視点から描く人類と異星体との戦闘主体のSFかと思いきや、人間と機械との繋がり・すれ違い、敵の正体・目的の謎解き、基地内における様々なエピソードも織り込まれていて奥深い作品です。それでいてアクロバティックな空戦シーンも迫力あり。


肝心の敵である「ジャム」は地球侵攻の目的だけでなく、生態からして謎ばかりの存在。そこで敵の情報収集の専門部隊には過酷な任務が課せられるわけです。そのため主人公・深井零所属する部隊は戦場で余計な感情に縛られないようにあえて非人間的な者ばかり集められたという。
でも深井零は「雪風」や親友ブッカー少佐の前では感情的な態度や未熟さも見せるごく普通の若者にも見えますけどね。


それにしても、主戦場が敵地フェアリイに移り、戦争が長引くにつれ、地球に住む人々の危機感は薄まり、地球のために「ジャム」と戦っているFAFは厄介者扱い。地球では相変わらず国家間の争いは絶えず、「ジャム」との戦争自体が現実感が湧かないためにでっちあげ扱いされるなんて何ともシュールな設定だなぁと思いました。
結局「ジャム」については、終盤に囚われの身になる深井零によって少しずつ明らかになるのですが、戦いの行く末も含めてはっきりされません。そこは続編に期待でしょうか。