6期・44,45冊目 『時空の旭日旗4,5』

時空の旭日旗―時空(とき)の分岐点 (歴史群像新書)

時空の旭日旗―時空(とき)の分岐点 (歴史群像新書)

時空の旭日旗5 (歴史群像新書)

時空の旭日旗5 (歴史群像新書)

4巻 時空(とき)の分岐点

内容(「BOOK」データベースより)
トラック諸島沖海戦で米第5艦隊を破った日本は、蘭印侵攻戦「烈」号作戦を始動。「あずみ丸」の未来情報(A情報)によって開発された電探や通信システム、そして一式軽戦車など新兵器を投入するも、連合軍は戦力を増強し戦局は膠着状態だった…。しかし、連合軍の増強は南方に日本の目を引きつけておくための罠でもあった。米国は、ソ連への武器貸与を行なう引き換えとしてアムール川沿岸に飛行場を開設。対日空襲の準備を着々と進めていたのだ。そして1941年12月12日。米軍はP‐51とB‐17の戦爆連合による日本本土空襲を開始する!!果たして日本は連合軍の猛攻に耐えられるのか!?超時空シミュレーション戦記シリーズ第4弾。

この世界ではタイ王国が連合国側につき、米英仏によって仏印が基地化されている状況もあって、膠着状態に陥った東南アジア情勢。ようやくフィリピンが落ち着いた今、日本はマレー半島と蘭印で攻勢に打って出ようかというのが前巻までの状況です。
機動部隊同士の遭遇戦で敗れた米軍は何をしているのかと思えば、ソ連沿海州に構築された航空基地から日本本土空襲という挙に出たのが今回のお話。
中立国経由の侵攻といえばドイツ軍もやっていましたが、はっきりいってこれは卑怯としかいいようがないですねぇ。ただでさえ列強に囲まれて孤軍奮闘の日本はソ連を刺激したくないだけに直接攻撃に出られないのを見越しているようです。
実は未来から来たあずみ丸のメンバーによる勘が働いて多少は避難が進んでたものの、防備が薄かった東北・北陸の諸都市はかなりの被害を受けます。
しかしここから史実と違うところ。未来技術を取り入れて発達した電信技術とそれを生かした早期警戒システム、高高度邀撃機によって効果的な迎撃を実施。まったく、史実でもこれくらいできていたらなぁと思うくらいですね。
更に早期に空母として建造された信濃を始めとする艦隊をアリューシャン・アラスカ方面に派遣して、補給線を断つという手段に出るところが絶妙。
そういえば、史実でも1942年前半にドーリットル空襲とMI・AO作戦がありました。時系列としては半年ほど早めている割には規模がまったく違うわけで、しばしば触れられているようにあずみ丸による歴史介入によって、史実より戦争進行のスピードが速まっているようです。


今回は海戦は控えめ、代わりに急ピッチで進む航空機技術によって早くも登場した疾風や各種偵察機はじめ新鋭機の活躍が多く見られました。
前は開発機種の多さが気になったりしましたが、主力機の陸海統合によって徐々に機種が絞られている様子。その分発展系のバリエーションが豊富になっているわけですね。
今のところ制空権争いの優位は保っているようですが、米英軍も対応すべく新鋭機を送り込んでくるであろう今後をどう描くかが楽しみですね。

5巻

内容(「BOOK」データベースより)
1942年初頭。昨年末の米国の日本本土空襲により中止されていた、蘭印侵攻戦―「烈」号作戦の再開命令が下される。その前段として、まず、海軍特別連合陸戦隊がパタニ、陸軍第五師団がシンゴラに上陸しタイ領内に侵攻。マレー半島での主導権を握る。さらに2月。パレンバン、ボルネオ、ジャワ、周辺海域の海軍作戦の4つに分けられた「烈」号作戦がついに動き出す。陸軍挺進第二連隊がパレンバンへの降下作戦に成功。ボルネオでは未来情報により進化した「二式水戦二二型」が上空を制圧。次いでジャワ島も陥とし、オランダ軍はついに降伏。日本の南太平洋における絶対防衛圏確立は目前まで迫っていた…。

防空体制の構築と米ソ遮断作戦の成功によって本土空襲の危険性が減じたところで延期されていたマレー・蘭印攻略作戦を発動したのが今回の話。
ヘリを駆使し機械化された陸軍といい、本格的に編成された海軍陸戦隊による上陸作戦といい、この時代の日本の軍隊かって思うくらい洗練されてますな(笑)
きわめつけは現代のパラグライダーなどで使われている技術を応用した空挺によるジャワ島への降下作戦。当時のパラシュートに比べ、安全性・操作性に優れている点が強調されていますが、そりゃ60年以上の格差は伊達じゃないだろうって。
もっともA(あずみ丸)情報による軍事利用は技術・運用だけでなく、実際の歴史をもとに戦訓を分析して(これはかなりのアドバンテージ)戦略をたてていく様が面白い。タイムスリップものならではですね。
まぁその分、次から次へと新兵器が登場する実際の戦闘シーンは飛ばし気味ですけど。


史実では手痛い反撃をくらい軍事バランスが傾いた後に策定された絶対防衛圏ゆえに雪崩式に破られてしまいましたが、この世界では余力を残しているのと、占領地の政治的経済的な独立支援を行っているのが違うところ。
このまま持久体制を保てれば良いのですが、そうは問屋が卸さない。早くも連合軍の本格的な反撃が始まるというのが後半です。
潜水艦による全方位的なゲリラ戦術と機動部隊による空襲を組み合わせてくるところで守る側としても対処に困るところ。次巻にかけて結構激しい戦闘が展開されそうです。
マッカーサーが立てた反攻戦略は史実よりさらにスケールが大きい描写として見受けられますが、日本軍はどう対処していくのでしょうか。


ところであずみ丸に搭載のデスクトップだけでなく、個人が携帯するノートパソコンは統合本部でのプレゼンに大活躍。ただ、タイムスリップ後7年経ち、修理もままならない状態でどれだけ持つのかちょっと気になりますね。
あと、この巻だけではないんですが、誤植が結構目につきます。それも日本海軍の名の知れている艦爆乗りが戦闘機を駆って敵に突っ込んだり、SBDデバステーターが急降下爆撃を行ったりと、架空戦記読者ならばすぐ気がつくレベル。はっきり言って盛り下がるのでちゃんと校正してほしいですね。