3期・21冊目 『七つの怖い扉』

七つの怖い扉 (新潮文庫)

七つの怖い扉 (新潮文庫)

内容(「MARC」データベースより)
ラスト1行で戦慄させる秘術。彼岸と此岸を行きつ戻りつする朧ろな語り口。恐怖のなかに悲しみを織り交ぜる巧緻。7人が7様のテイストで描く書き下しホラーの競作。

七人の人気作家の作品が収められたホラー短編集。ホラーというより、幻想的な雰囲気の方が感じられ、あまり怖くはなかったです。だけどどの話も洗練されていて楽しめました。
その中であえて「怖い」と感じたのは乃南アサ『夕がすみ』でしょうか。途中までは事故によって両親を失った少女が新しい家族に迎えられていくいい話だなぁと思っていたところで急展開。最後は語り手の「私」と同じようにぞっとするかもしれません。
阿刀田高『迷路』は実は2chでこれに似た話を読んだことがあるんですね。*1こうやって小説で読むと、母親の情の深さを怖いと感じるかイタイと感じるかで分かれるかも。
鈴木光司の『空に浮かぶ棺』はあの『リング』の外伝『バースディ』に収録されているもので、なんでここに?と思いましたが、『七つの怖い扉』の方が先らしいです。
内容としては、主人公・高野舞が遭遇する不条理を思うと確かに怖い面はあるものの、『リング』とその続編を繋ぐ重要な場面なんです。なので本編を知っていないと高野舞の回想の内容がわかりにくいでしょうね。
宮部みゆき『布団部屋』・夢枕獏『安義橋の鬼、人を�驚(く)らふ語(こと)』は時代物の雰囲気と不思議な雰囲気が伝わってきて良かった。
最後の小池真理子『康平の背中』はあそこまで引っ張っておいて、最後のオチでがっくり。ベタなホラー漫画っぽくて残念でした。