- 作者: 中山雅洋
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (20件) を見る
学研M文庫の世界史をテーマにした本をいくつか読んだことがありますが、入門書としては妥当ではあり、今回も空戦に限った戦史に関しては概ね満足できる内容でした。
ソ連の膨張によってバルト3国が実質併合されたあたりから北欧3国(フィンランド・スェーデン・ノルウェー)の苦悩が始まり、国防の第一として航空戦力を配備するのですが、小国ゆえの限られた予算・人員による涙ぐましい努力に感嘆させられます。
あの手この手で欧州各国の機体を入手し、時には設計図を暗記して作ったり、金が無くて特産物の干鱈を代金にして購入*1したり。
大国が1機種につき数千機のオーダーの戦力を持ちうるのに対し、北欧の小国はせいぜい数十機から100機をようやく超える程度であり、実際に戦ったら1,2戦で壊滅は必至と思われます(実際、ナチスドイツの攻撃を受けたノルウェーはそうでした)。しかし2度までもソ連の攻勢を受けて凌いだフィンランドの防戦は見事としか言いようがありません。そこには、森と湖が大部分の地形を生かした運用もそうですが、量より質を選んでとてつもなく錬度を上げた戦闘機隊の活躍を抜きにしては語れません*2。たとえ機体が壊されても持ち帰って修理し、損傷の少ない敵航空機をも再生して使うのは当たり前で同型機同士の戦闘もしばしば発生したとか。ブリュースターF2Aバッファローを始めとした、他国では評価が低かった戦闘機の性能を充分引き出して(改造含む)数々のエースを輩出したのも面白い。
やはり厳しい気候で育まれた粘り強いフィンランド人の資質もあったのではないかと指摘されています。
登場する機体をほぼ網羅した写真や空戦記録、実際にフィンランドのエース達へのインタビューまで記載されていて、航空戦の様相を知るのに適しているのではないでしょうか。