3期・4冊目 『天空の蜂』

天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

昔はクライシス・サスペンスをよく読んでいたものですが、東野圭吾でこういう著作があったなんて珍しい。それでつい書店で手に取りました。そういや昔読んだ中に、もし原発が某国テロリストに占拠されたら・・・なんて内容のもありましたね。
全体的にかつて読んでいた作品に比べても遜色ないどころか、充分読み応えあって見事と言える内容。最新型ヘリと原発のシステムが重要な要素となっているので、技術的な説明は不可欠ですが、それについても「よく調べたなぁ」と思うくらい詳細に記述されてる。
原発に関して、推進派と反対派それぞれの立場の人物の逸話がうまく配分してあり、読む側としても自然に関心を抱くようになります。
そして対処に追われる警察や原発の人間だけでなく、後半は犯人像や動機も徐々に明かされるのですが、キーとなっているのが子供。中盤の山場でヘリに取り残された子供の救出シーンにハラハラさせて、共犯者の子供の事故の真相に迫るくだりも強い印象を受けますね。
重要な存在の割には国民の多くは無関心である。*1原発について国民はもっと知らなければならない、という犯人のメッセージが強烈。

*1:自衛隊も同じく。