2期・47冊目 『獣たちの夜』

出版社/著者からの内容紹介
学生運動の時代を舞台に、押井守監督が描く人間と吸血鬼の死闘!!
1969年夏。デモに参加し、機動隊に追われた高校生零は路地裏で殺人現場を目撃する。日本刀で何者かを惨殺した犯人は、あどけないセーラー服姿の少女だった。その日から零の回りで不審な出来事が相次いで起こる…

あらすじだけ見ると、人間離れした剣技を見せる美少女剣士と、闇に棲む異形の化け物との争いを描くアクション・ストーリーを想像しがちですが、それはあっさり裏切られます。*1
時代はまさに学生運動真っ盛り。冒頭のデモ・シーンは読む人が読めば郷愁を誘われるのかもしれませんが、私なんかはさすがに現実感わかないですねぇ。*2 でも過去に日本でそんなことがあったのは出来事としては知っていましたが、こうやって小説で読むと感慨深いものがあります。


さて主な登場人物として、高校生ながらいっぱしの活動家ぶる主人公・零とその友人たちですが、妙に理屈っぽい議論を戦わせるかと思えば、やはり大人になりきれぬ部分も抱えていたりして、微笑ましいというか懐かしいというか。


事件の真相を探るべく、胡散臭げな刑事と一時的な協定を結んで行動する零たち。後半になって事件の核心に迫るかと思うところで、ながーい薀蓄があるんですよ。
「生物学的な吸血鬼の存在の可能性」とか「中世ヨーロッパから続く陰謀の歴史」とか面白いネタも無くは無いのですが、くどすぎてテンポが一気に悪くなってしまいましたね。ラストの少女との出会いは、中年の域に達した世代の無常感を感じられて良かったですが。

*1:買った時に期待しなかったと言えば嘘になる。映像化されれば、大人の都合で変わるかも

*2:通っていた大学の構内に学生運動の残滓はありましたが