- 作者: 高島俊男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/19
- メディア: 新書
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さらに規模が大きくなれば、地方の都市を占領して一大勢力と化し、更には国をも盗って皇帝と称するところまで至る。それが中国の歴史上いくつも見られる特徴であると。
皇帝を称して長続きすれば王朝になって正史が編纂されたり、美化された伝説も後世に作られるってことですね!
考えてみれば、日本史において全くの徒手空拳の立場から位人臣を極めるところまで立身出世した人物と言えば豊臣秀吉が有名ですが、他には見当たりませんね。*1
下克上の戦国時代と言えど、日本には天皇をはじめとする朝廷の権威(というか畏れ)が細々ながらも根強く生きていて、それを覆そうという人物はいなかったわけで・・・。*2
国まで乗っ取った大盗賊の好例として、漢の高祖(劉邦)や明の太祖(朱元璋)、さらには明末の李自成や太平天国の洪秀全を挙げていますが、本当にびっくりさせられる大物は最後に来ます。
第5章 これぞキワメツケ最後の盗賊皇帝―毛沢東
解説によれば元々1989年に初版『中国の大盗賊―天下を狙った男たち』が出版された頃は、諸事情により原稿から毛沢東の箇所は大幅カットされたそうな。
ソ連崩壊前ですからね。日本国内においても完全版が出版された2004年とは時代的な雰囲気の違いがあったということでしょう。
全体的に中国史の特徴をわかりやすく述べていて、まさに目から鱗的な記述が多いのですが、例えば
- 実は盗賊よりも、町を守るはずの官軍の方が酷い。官軍の兵自身が略奪を働いた挙句、盗賊を完全に征伐すると仕事がなくなるので、下っ端か酷い時には村人を殺して、首領の首だと報告する。中国では「文」より「武」が低く見られたので、兵隊にはろくな人間がならなかったから。
- 毛沢東はマルクス主義の信奉者ではなかった。自国の歴史的教訓を元に清末からの混乱期を戦いぬき、最終的に国民党・日本軍との戦いを制して勝ち残ることができたのだ。
- 近代の中国の歴史書は、出版された時代的事情によってかなりフィルターがかけられている。(下手なことを書くと首が飛ぶ為)
という点ですね。
特に毛沢東と戦後の中国共産党の政治史に関しては、あくまでも客観的に光と影の部分を書いていて理解しやすい。こういう本にはもっと早く出会いたかったと思わせられました。*3