- 作者: 井沢元彦,和田秀樹
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/05/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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対象となっている人物は以下の通り。
平将門
徳川綱吉
道鏡
田沼意次
蘇我入鹿
井伊直弼
吉良上野介
平清盛
足利尊氏
織田信長
乱を起こしたり(平将門)、政治的な敗者(道鏡・田沼意次・蘇我入鹿)、後世に悪名が膨れ上がってそれが定着してしまった人物(徳川綱吉・井伊直弼・吉良上野介)まではわかるのですが、最後は誰でも知っていそうな有名人で悪評もある人物(平清盛・足利尊氏・織田信長)であり、わざわざ汚名返上しなくてもと思うのですが、あえて取り上げたのかもしれないですね。*1
特に織田信長の宗教弾圧については現代の感覚で嫌う人がいるでしょうから、時代背景と当時の寺社勢力の本質を知る必要があるでしょうね。
乱を起こして敗れたり政治的な敗者というのは、勝者によって事実が捻じ曲げられた記録が遺されたためということでわかりやすいですね。
特に道鏡なんかは女帝・孝謙上皇(後の称徳天皇)との性的関係が揶揄されていますが、両者の年齢(40代と60代)を見ただけでおかしいわけで、そこにかなり悪意が含まれていると感じます。
田沼意次と蘇我入鹿についてもその考えと政策が時代の先駆者であった感がありますが、これも守旧(反対)派に敗れたために酷い悪名が着せられたものです。
徳川綱吉については井沢元彦の代表作『逆説の日本史』で取り上げられているのを読んだことがありますが、戦国の気風を引きずっていた時代背景と生類憐みの令の真意を知ればその印象はかなり変わりますね。
井伊直弼については典型的ですけど、当時は評価されないが後世から見ればまっとうな政治判断を下したと思えます。
吉良上野介などはまったくの冤罪、むしろ精神異常者(浅野内匠頭)による傷害事件および曲解した遺臣による逆恨みの被害者であると言えましょう。『忠臣蔵』は物語としてはよくできていますが、吉良の人物像としてはデタラメもいいところであるとか。
和田秀樹氏による専門的な人物解析があるのが特徴ではあり、歴史上の人物をそういった点で見るのも面白い試みではあります。
ただ、特に専門用語を使うほどではないかなと思われる箇所もありました。まぁ雰囲気作りもありますかね。
一人一人の内容としては少なく、歴史好きとしては物足りなくも感じるのですが、定説や一般的な印象ををわかりやすい説明で覆す取組みとしては評価したいところですね。