- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/12/01
- メディア: 文庫
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利用していたと言ってもいつも決まった路線しか乗らないので、たまに都心の中心部に行くほど、駅の名前自体はよく知っているのに、どうやって行けばいいのかわかりにくくて、長ーい通路や何層にも降りなければホームに辿りつけなかったりと、まさに地下の迷宮という感じでした。
そんな地下鉄ネットワークの中で、過去にタイムスリップを繰返す中年男性のお話です。(タイムスリップする度に昔に遡る)
徐々に明らかにされる彼の複雑な家族の過去。そしてどうにも閉塞感のある現在の状況から目を背けようとする状況が交互に描かれます。
彼はまず少年時代に自殺してしまった兄を死なせない為に奔走するのですが・・・。
タイムスリップで過去に干渉した結果が、確実に現在に反映するのですが、ならばそれで自分の人生をやり直そうというのが普通の考えでしょう。
でも歴史とは個人の力で思い通りにどうこうできるものではなかったのです。
むしろ本書のテーマとしては、普通は知ることの無い親の前人生に立ち会うことによって、自分自身が生まれる前の時代背景とかバックポーンを知るというのが重要なテーマになっているようです。
読み終わってみると、そこはかとないせつなさを感じる物語でした。