2冊目 さだまさし『解夏』

解夏 (幻冬舎文庫)
正直、偏見を抱いていた。どこかの音楽アーティストの書いた隙間だらけの退屈なエッセイを読んだ経験や、ゴーストライターを雇って書かせたという噂を聞いたせいもあったかも知れないが、そんなくだらない偏見を改めさせられた作品であった。
音楽面でのさだまさしはよく知らないが、シンガーソングライターとして、独自の世界観・実績を持ち、熱心なファンがいることを考えれば、歌であれ小説であれ人を感動させる物語を作る能力に恵まれているということは変わりないのだろう。


あえて内容には触れないが、1作目の『解夏』にしても導入部からすんなり物語に入れたし、主人公の苦悩には我がことのように感情移入できた。『秋桜』のラストでは不覚にも電車の中で涙が出そうになった。他の収録作品も感動的である。共通しているのが仏教の教えの思想面が、押し付けでなくさりげなく触れられているということであろうか。別に仏教に限らないが、人が苦しい心境の時に救いの手を差し伸べてくれるという宗教の普遍的なというか良い面があるということを教えてくれる。そして家族や恋人・友人における思いやりの心がどんなに重要なことかいうことを気づかせてくれた作品である。


この作品を推薦してくれたmoli-xiongさんに感謝!!