1冊目 田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)
30から40前後のそれぞれ女性の恋愛模様が短編集という形で収められている。その中の女性たちに多いのが、自立して夢中になれる仕事を持っていたり、苦い別れを経験(現在しつつ)したりである。読書中そして読了直後の印象として、小奇麗にまとめられているな〜、という感じである。決してつまらないわけでもないが、品のいい喫茶店にてBGMとして流れている音楽を聴いているような。ストーリーとしては感心できるが心に残らない。ずばっと心に響かないのである。それは自分が男だからか?でも同じ女性を主人公にした短編集なら宮部みゆき『地下街の雨』は良かった。


あえてこの中で一つ良かった作品を選ぶとしたら、「恋の棺」であろうか。自分のことを愛しく思っている少年に対して、優しい言葉をかけると同時に心の中では冷たい言葉も浮かんでいる。そんな感覚わかるような気がする。たまたま相手によって態度を使い分けてしまえることを二重人格と呼ばれるが、それは誰にだって多少あることではないか。


解説で山田詠美が書いているが、面白さを理解できない私はつまらない男なのかもしれないが、合わないものは仕方がない。