10期・75冊目 『南海蒼空戦記5 機動部隊激突』

南海蒼空戦記5 - 機動部隊激突 (C・NOVELS)

南海蒼空戦記5 - 機動部隊激突 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

ドイツが接収したソ連製兵器や、新型Uボートの投入により、欧州戦線は膠着状態に陥った。大損害を被った英軍は、米軍にB29の欧州投入を要請。だが、米軍は日本本土への攻撃を優先させるため、取り合わない。一方、太平洋では迫り来るB29の脅威を除くために、日本海軍はマリアナ奪回に打って出た。マリアナを死守するため、機動部隊を出撃させた米軍と一進一退の攻防の中、ついにマリアナ諸島北部のアグリハン島沖で激突するが―。ドイツの技術流入により高性能化した兵器を駆使する、もう一つの日米決戦の世界。待望のシリーズ第五弾!

遂にB29の試作機が硫黄島に現れ、迎撃に上がった飛電がなすすべもなく、逆に被害を受けるばかりであったことに衝撃と脅威を感じた日本軍首脳部。
今までの爆撃機の性能を軽く凌駕するB29が本格的に運用されるようになっては日本本土が焼野原になるであろう可能性は高く、急ぎジェット機を始めとする新たな迎撃機の導入を命じ、そしてB29の根拠地となるであろうマリアナ諸島の奪取のために動き出します。
一方、イタリアに上陸した連合軍ですが、ドイツ軍はソ連製の兵器やジェット機などによる強力な反撃を受けて前線は膠着状態。地中海経由で援軍として送り出した輸送船団が驚異的な水中速度を誇る新型Uボートによって大損害を受けてしまいます。
なかなかドイツに効果的なダメージを与えられない英軍はB29の欧州投入を強く要請することになったのですが、アメリ*1は対日屈服のための切り札として使用する姿勢に変わりはなかったのでした。


本作も終盤に差し掛かり、B29を巡って戦局が動いていく感がありますね。
対独戦の決め手として是非とも利用したいイギリスに、その脅威を感じて対応に苦慮する日本。
切り札として満を持して送り出すアメリカはともかく、当時の日本人がそう判断するあたりは後世の知恵っぽい気はしますが。
いずれにしてもマリアナ諸島を巡って再び機動部隊が激突するのが今回のメインと言えるでしょう。
空母ではアメリカは搭載機数の多いエセックス級が主力なるも、全体的に日本がやや優勢か。逆に基地の攻防に割く戦艦では数に加えてノースカロライナ級を含むアメリカが優勢。
蓋を開けてみたら艦隊決戦志向を逆手に取ってアメリカの戦艦部隊は壊滅、航空決戦も新鋭空母の大鳳が袋叩きの末に失われるなど少なくない損害を受けつつも勝利したのですが、最後は米軍の執念が実って攻略自体は失敗。
日本にとっては戦術的勝利・戦略的敗北だったのですが、まさにそこに両軍の特徴が見られましたね。
日本のパーフェクトゲームにしなかったのは、ドイツ人技術者により開発したジェット機や究極のレシプロ戦闘機(モデルはTa152だろうな)の見せ場を書きたかったからだろうなと推測。
しかし日本本土空襲までさせてしまうと、戦争の落としどころが難しくなる気がしますが。
最近のシリーズでは欧州戦線(概ね史実よりドイツ優勢)が日米戦に影響与えることが増えていますが、こうなったらドイツメインの歴史if物*2を書けばいいんじゃないかと思ったりして。

*1:ルーズベルト大統領個人の独断であって、軍人たちの考えとは乖離していく様子が見られる

*2:昔、『砂塵燃ゆ』(全3巻)はあったが