横山信義 『高速戦艦「赤城」5-巨艦「オレゴン』

日本軍は多大な犠牲を払いつつもグアム島を攻略し、米海軍の攻撃先鋒を潰すことに成功した。これを機に、日本政府は英国を通じて講和を打診をするのだが、米国政府からは一顧だにされない。なぜなら、米軍には強力な戦艦や巨大な空母といった新鋭艦が続々と加わりつつあり、次こそは勝利を得られると確信しているのだ。
米軍が戦力を拡大し続けるのであれば、このまま守りに徹していてもいずれ日本軍は押し負けてしまう。であれば自ら決戦を挑み、圧倒的な勝利をもって米国の戦闘意思を挫くしか道はないのか――。
トラックを根拠地とする米海軍主力を撃滅せよ、との難題を課せられた連合艦隊は乾坤一擲の大作戦を開始した。

「米国を和平交渉の場に引っ張り出すためには、決定的な勝利が必要となる。かの日本海海戦に匹敵するほどの勝利が」

前巻にて、ようやくグアム島を攻略し、マリアナ諸島を手中にした日本軍。
ここまで戦争を優位に進められているものの、今後は国力の差で圧倒されるのが目に見えています。事実、アメリカ海軍では既存艦を超える戦艦・空母を就役させていました。そんな状態ではイギリスの仲介による講和交渉も不調に終ります。
戦争の講和を目指すには圧倒的な勝利をもって米国の戦闘意思を挫くしか道はない。それにはトラック基地の奪回と太平洋艦隊の撃滅。
かつての根拠地であったトラック基地は米軍の航空要塞と化しています。実際にB17が連日飛んできて、グアム島の復旧を妨げるほどでした。
困難が予想されるものの、連合艦隊は乾坤一擲の作戦を開始するのでした。

世界観としては日英同盟が継続し、ロシア始めヨーロッパが完全中立。日米ガチンコな状態で始まった架空戦記シリーズ。日本にとっては史実より優位であっても、この時期のアメリカを単独で相手取るには完全勝利は到底かなわず、優勢を保ったままで講和を結ぶしか道はありません。長引くほど追い込まれてしまうのは自明の理。*1 それくらいチートな相手なんですよね。

一方で米軍も航空戦では不利なのはわかっているので、トラック基地に集結させた航空機で補い、待ち構える姿勢を取りつつ、B17での攻撃は継続する。そんなところへむざむざ攻めに行くのか?
そこでGF首脳が思い付いたのは、かつて中継拠点であった硫黄島が空襲を受けたこと。それをやり返してやることでした。
というわけで、機動部隊の特徴を活かすべく、米軍の中継拠点であるクェゼリン基地への空襲が実施されたのでした。

あえて守備を固めているところに当たるのではなく、弱いところを衝く。正攻法を好んだ史実日本軍なら好まない作戦が功を奏しましたね。
トラック攻防戦にて激しい航空戦が繰り広げられましたが、補給が途切れた米軍が制空権を失っていくという展開。
そこで一矢報いようと分散退避していた戦艦部隊の中、巨艦オレゴンが動き出すという流れになっていくのでした。
米軍が戦艦を分散していて、たまたまオレゴンだけの部隊が日本軍の戦艦3隻と対峙するというのは都合よすぎる気はしなくもないですが、架空戦記ですからね。米軍が戦艦をまとめていたら水上砲戦は発生しなかったかもしれないですし。日本海軍が航空主義に切り替えたという想定で高速戦艦が主役というのは難しいところがあるんじゃないかと思います。
とにかく戦争の行方は次に持ち越されたようです。どうやって講和へ持ち込むのかは当然気になります。それから果たして赤城対オレゴンの再戦は発生するのでしょうか。まともに戦ったら赤城のスペックでは勝てないでしょうから、航空機などと共闘することになるんじゃないかな。

*1:理解していたのは山本五十六などの一部の知米派だったが。