11期・42冊目 『精霊幻想記5 白銀の花嫁』

精霊幻想記5.白銀の花嫁 (HJ文庫)

精霊幻想記5.白銀の花嫁 (HJ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

運命的な再会を経て保護した美春たちの身の安全を考え、精霊の里への引越しを決めたリオ。ラティーファたちの全面協力もあり、美春たちは急速に里へと馴染んでいく。賑やかな日々が続く中、リオは学院時代の恩師であるセリアに会うため、四年ぶりにベルトラム王国へと足を踏み入れる。だが、そこでリオはセリアと王国の大貴族との政略結婚が迫っていることを初めて知って―。「…じゃあ、リオが私を貰ってくれる?」悲しげに微笑むセリアを、リオは救い出すことが出来るのか!?

前巻にて巻き添えで転移してきてしまった三人(前世天川春人の想い人だった美春、離婚して離れ離れになった妹の亜紀、その弟である雅人)を保護し、格納式の家で生活していたリオですが、彼らの安全を図るためのと、当面の生活の場として精霊の里へ連れていくことになります。
ここからWeb版とは大きな分岐が発生して、書籍版ではまったく別の展開を見せます。
リオが精霊の里へ行くことにしたのは目覚めて間もないアイシアについて大樹の精霊・ドリュアスに聞くためでもありました。
精霊の里ではリオの大切な友人ということで美春たちも歓迎されて、年が近い者たちともすぐに仲良くなります。
ただし、高位精霊の証である人間形になる前の記憶を持たず、「全ての術が得意」というアイシアの謎はさすがのドリュアスでもわからず、しばらくは様子見ということになったのでした。


前半は精霊の里でのまったりとした様子が描かれますが、後半は召喚勇者のことを調べるため、密かにベルトラム王国に侵入したリオがまずは恩師であるセリア先生の元に向かった際に知った事実。
それはリオにとっても学院時代に因縁の相手であったアルボー公爵家の嫡男シャルルと結婚*1することになり、式を翌日に控えているのだという。
貴族である以上、本人の意に添わない家同士の都合で結婚するのが普通とはいえ、どうしてもセリア先生に会ってその気持ちを確かめたくなったリオは彼女が居る(実質軟禁状態)王城の離れに密かに侵入。
そこで無事再会が叶ったのですが・・・。


今回は「静」の前半と「動」の後半と言った感じでくっきり分かれていましたね。
もっとも「静」の前半でも、平和な日本とはまったく命の軽さが違う異世界にて、雅人がリオとの本気稽古を通じて戦うことの決意を得るなど動きはありましたが、全体的に穏やかな雰囲気でした。
後半は衆人の中での堂々たる花嫁強奪、それに追いかけてきた王国騎士団との戦いなど、クライマックスらしい盛り上がりを見せました。
確かセリア救出シーンはWeb版でもありましたが、こちらの方が断然惹きつけられるものがありました。セリア先生の花嫁姿も素晴らしかったし。
花嫁強奪といえば、映画『卒業』みたいに式の最中で乱入するかと思いましたが、さすがに違いましたね(笑)
Web版より大胆にかっさらってしまった以上、二人の関係がどう変わっていくかが気になるところではあります。
また、今回のことでベルトラム王国の勇者ルイ・シゲクラとは敵対関係になりましたが、他の勇者とはどのように対することになるのか?今後美春たち三人と貴久らの再会は?
最後にちょろっと名前が出てきましたので、そのあたりは次巻に描かれるのでしょう。
こちらもWeb版とは違う展開になるのか、楽しみであります。


ちなみに元のWeb版での大雑把な流れとしては、以下の通り。*2
ガルアーク王国にて召喚された勇者たちのお披露目会が行われることになって、リオは一時的にアマンダの代官である公爵令嬢リーゼロッテのパートナーとして参加することになります。
そこで美春らは亜紀・雅人の兄である貴久や沙月(どちらも召喚された勇者)との再会が叶って、実質貴久に保護を任せることになってしまうわけです。
舞踏会の最中にレイスが放った刺客から王族・貴族令嬢たちを見事守るなど活躍を見せ、謝礼としてガルアーク王国より爵位待遇を得ることになるのですが、肝心の美春に対しては完全にへたれ。
散々に迷った挙句、美春に対して自身の真実を記した手紙を渡そうとするも、本人には会えなくて、言付けを頼まれた貴久がアクシデントによりその中身を見てしまい、衝撃を受ける。
結局、貴久は後ろめたい気持ちを抱えながら真実を隠して美春らを強引に自らの所属するセントステラ王国へ連れていってしまい、リオと美春は互いの気持ちを確かることさえ叶わずに永らくの別離を過ごすことになるのです。

まさに不遇主人公の真骨頂と言わんばかりの展開に、読者としては非常に鬱憤が溜まってしまうのでした(笑)
おそらく著者は主人公に多くの女性に言い寄られるモテモテぶりを見せる一方で、本命の彼女とは障害の連続で最後の最後まで結ばれない宿命を持たせたかったのだろうなぁと思ったものです。
さすがに書籍版では精霊の里に連れていくことで、安全を確保するという自然な流れになっていますね。
まぁ、ラテーファを始めとしてリオを慕う女性ばかりの中で、二人の間がどうこうなるというわけでもなさそうですが。
個人的にはリオの前世を知る転生者ラテーファとの絡みが発生したのが今後の流れ的にも良かったと思います。

*1:なんど8人目の妻!

*2:記憶を辿りに書いたので、多少違うかも