不手折歌 『亡びの国の征服者3 魔王は世界を征服するようです』

家族の愛を知らぬまま命を落とし、異なる世界で新たな生を受けた少年ユーリ。
彼は騎士家の名家であるホウ家の跡取りとして入った騎士院で、王女のキャロルや魔女家の生まれであるミャロらとの交流を深めていた。
学業や訓練の傍ら、ホウ社での製紙業を成功させ、さらなる事業拡大を目論むユーリ。
全てが順風満帆かに見えたが、ユーリの目はやがて来たる祖国の亡びへと向いていた。
そして自分や大切な人々が生き残るための一手――“新大陸の発見"を目指し、ユーリは遠大な計画を推し進める。
そんな中、隣国であるキルヒナ王国に“もう一つの人類"であるクラ人の侵攻が迫っていた。
そしてユーリは女王から、隣国の戦争とキャロルに関わる一つの“厄介ごと"を頼まれることに……?
のちに「魔王」と呼ばれる男は、緩やかに、しかし確実にその運命を辿りつつあった――。

2巻から引き続き、主人公ユーリ・ホウの騎士学院生活が中心となります。
とはいえ、上級生となって卒業に要する単位はほぼ取得し終えてしまいましたので、商売諸々のエピソードが多いですね。
騎士院を代表して、教護院との斗棋対抗戦に出場。
順当に決勝まで進出したはいいが、相手がろくでもない魔女家の女子生徒。
ユーリは面倒ごとを避けるつもりで、1勝2敗で相手に勝利を譲るつもりが、実力不足もあって気づかず、大切な工場を放火するといった脅迫手段を取ってきたのでキレたり。
製紙工場を再建するにあたり、ホウ家の飛び領地を使用することにしたり。
機械工作の天才リリー先輩に天測航法に必要な計測機械を発注。その関係で煩悩を刺激される展開があったり。
それから、船を失っていたハロルに再度新たな船を任せることにして、貿易に乗り出して儲けを出したりと色々動いている様子が窺えます。
ここまでは(曖昧な部分もあるものの)前世の知識を使って、学生というより若き実業家として活躍しているユーリ。王族でありながら気さくな付き合いをしているキャロル、あからさまに好意を見せるリリー先輩、改めて男装女子であることがわかっても従前通りの付き合いを続けているミャロといった周囲と良き青春を送っているようにも見えますね。
とはいえ、利権を握る魔女家を始めとして、国としてはかなり危うい状況であることは強く感じます。

特に国外情勢は平穏からは程遠く。
隣国には十字軍が押し寄せてくることになっていて、母国シャルタからも援軍が出されることになってます。*1
次世代を担うキャロル、ユーリらに現実の戦争というものを見せておきたいという女王の願いにより、騎士院から観戦隊を出すことになります。
ユーリにとっては甚だ迷惑な話ですが、女王から呼び出されて直接依頼されたとあっては断ることもできず、隊長に就任することを条件に了承します。
現代と違い、観戦隊といえども下手したら命を失う可能性あり、ましてや王女であるキャロルが敵に見つかってはおおごと。ユーリの責任は重大です。
そんなわけで、ユーリは抱えている仕事の手当てやら、ミャロたちに希望者の選出を依頼したりと大忙し。
次巻の内容は観戦がメインとなるのでしょう。
無事に行かなそうな予感をひしひしと感じますね。
一度読んでいるだけにおおよその内容は記憶にあるのですが、ユーリとキャロルにとっては重要な転機となる展開が待ち受けているわけで、次巻が楽しみで仕方ありません。

*1:ホウ家は前の戦争で当主自ら特攻し、総大将を討ち取る代わりに壊滅しているので免除