11期・18冊目 『連続殺人鬼 カエル男』

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

口にフックをかけられ、マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。街を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の犯行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに…。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の目的とは?正体とは?警察は犯人をとめることができるのか。

ひらがなだけの子供が書いたような稚拙な文章−それはまるで捕まえたカエルをいたぶる日記のようだった−と共にそれを再現するかのように置かれた無残な他殺死体。
始めは”みのむし”のようにマンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。
次は廃車のプレス工場に置かれた車のトランクに密かに入れられていて(カエルを潰す)、その次は人が寄り付かない寂れた公園でのバラバラ死体(カエルの解剖)。
犠牲者はすべて飯能市在住の市民であり、通称カエル男の犯行に市民は恐慌し、続けざまに犯行を許して一向に有力な手がかりさえ掴めない警察に怒りの矛先が向かいます。
不用意に漏らした記者の発言により、犠牲者が五十音順に選ばれていることがわかると、次に狙われるであろう「え」やそれに近い苗字の市民は平常心を失っていくのです。
遂に限られた関係者しか居場所を知らないはずの「え」始まりの犠牲者が出てしまうと、パニックに駆られた市民は集団で警察署に押し寄せて・・・。


「カエル男」という一見ふざけた名前のタイトルとカエルが武器を持っている表紙から、ファンタジーホラーっぽくも思えるけど、実に丹念に構成されたミステリーだと思います。
刑法39条の扱い、前科者の社会復帰と再犯問題、事件被害者遺族の感情、事件を娯楽として扱い遺族の感情など踏みにじるマスコミ・・・。
現代の殺人事件をめぐる縮図をぎゅっと詰め込んだ上で、主人公の刑事の目を通して大胆にかつ赤裸々に語られていくのが見事です。
犯人を追うのが、単なる正義感ではなく自身の複雑な心理的背景から警察官になった古手川とその上司の渡瀬。この二人がとてもいい味出してます。


個人的には群衆が暴徒と化して警察署に押し寄せるあたりから、ページをめくる手が止まらなくなりました。
意外な人物が犯人というのはお約束ですが、主人公である刑事が好印象を持った人物が実は・・・という点はちょっとショックが大きいかもしれませんねぇ。
犯人の子供時代の描写も並行して書かれているのですが、読者も登場人物たちもすっかり騙されてしまいます。
ネタバレしちゃうとつまらないので詳しく書きませんが、第一のどんでん返しは具体的な小道具や舞台も揃っていて納得だったのですが、第二のどんでん返しはそんなにうまくいくのかな?って気がしなくはないです。精神的な問題だけに。ただ最後の一行も含めて非常によくまとめてましたね。