10期・60冊目 『天冥の標8 ジャイアント・アークPART2』

内容(「BOOK」データベースより)
西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、邪悪なる“咀嚼者”の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遙かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、メニー・メニー・シープ再興に向けた苛酷な道へと踏み出していく。そして瀕死の重傷を負ったアクリラは、予想もせぬカヨとの再会を果たすが―ふたたび物語が動き始めるシリーズ第8巻後篇。

気づけば前巻から1年以上経っていて内容をど忘れしていましたが、巻末の年表等と合わせて読んでいく内に思い出してきました。
8巻『ジャイアント・アーク』は時系列的に怒涛の展開を見せた第1巻『メニー・メニー・シープ』の直後にあたり、太陽系から遠く離れた植民地と思われた世界が地中に作られたものであるという、まさしく先祖代々現地で暮らしてきた人々にとって驚愕の事実が明かされます。
そして独裁を敷いていた領主がその裏で地下深くから来る“咀嚼者”(フェロシアン:自らの体に硬殻化を行った”救世群”の人々)と戦っており、それにリソースを割いていたことも。
今回は“咀嚼者”の地上侵略によって首都を追われた人類が、大統領となった女性議員エランカを中心にして新政府を組織し、反撃に出るパート。そしてラバーズ”恋人たち”のラゴスによる手術により命を取り留めたカドム・セアキが逃亡したユレイン三世やイサリなどの仲間と共にこの世界の仕組みを知るための冒険に出るパートの二つの流れが交互に展開されていきます。
前巻ほどの起伏は無くやや地味ではあるけれど、今までの巻と同じように単体でも充分楽しめるのですが、ここまでの流れを思うと、徐々に過去を思い出すラゴスや真実を知って驚くばかりのカドム(準惑星セレスに辿りついたアイネイア・セアキの子孫)の姿には感慨深いものがあります。


それにしても”救世群”が仕掛けた戦争から三百余年経っていて、人類は事実上滅んだと思われる状況ゆえにメニー・メニー・シープ以外の世界はどのようになっているのか?*1
そして度々記述されるオムニフロラとノルルスカインとの戦いの行く末は?
いろいろと気になる点を抱えたままこの壮大な物語は佳境を迎えていくと思われます。

*1:今回は少なくともセレスの地表は廃墟と化しているのがわかる