8期・65冊目 『八八艦隊海戦譜 攻防編2』

八八艦隊海戦譜 - 攻防篇2 (C・NOVELS)

八八艦隊海戦譜 - 攻防篇2 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
日本海軍は豪州における米軍基地の無力化を図り、米豪分断作戦を実施。ブーゲンビルの無血占領に成功し、航空基地建設に着手していた。だが、突如としてB17が大挙襲来。零戦が二〇ミリ弾で反撃するも、鉄壁の防弾装甲の前に阻まれ、戦線は膠着する。連合艦隊司令部は窮地に陥った南東方面艦隊を救出すべく、八八艦隊の投入を決定!立ちはだかる巡洋艦ハートフォード」、さらに新鋭戦艦「ミシガン」。戦艦同士が死闘を繰り広げる中、戦局打開の望みを託された決戦兵器・高速雷撃艇「瀑龍」が、混戦のソロモン海に突入する!!

前巻では通商破壊を目論む連合軍に対して守備に徹していた日本軍ですが、なんとか守り切って蘭印が安定すると、今度は攻勢論が浮上してきます。
バトルオブブリテン敗北と米軍機(B-17)の登場によって今大戦初めてドイツが守勢に立たされたという欧州の情勢も描かれて、米豪分断作戦実施の運びとなります。
ラバウルを足掛かりにソロモン諸島など米豪間に横たわる島々を占領することによってオーストラリアの孤立と連合軍からの脱落を図るという。
仮に占領できたとしても補給の問題があるし、万が一維持できたとしてもそう簡単に米豪二国間を分断できるものかと素人でも思いつくところですがね。
それに史実でもミッドウェーの4空母喪失よりも、ガダルカナルに始まるソロモン攻防の消耗戦によって日本海軍は急速に弱体化していったわけですから、世界観は別でもおそらくシリーズの転換点となるであろう戦いが描かれていくのでしょう。


意外と堅実に進めた日本軍の作戦ですが、ラバウルに続いてブーゲンビルの無血占領に成功するもB17の来襲によって基地化が遅れ*1、その高性能ゆえに零戦だけでは迎撃しきれない。
⇒戦艦の夜間砲撃と山口多聞率いる空母部隊の空襲(ただし戦闘機のみ)によって一時的にガダルカナルにある米軍基地が無力化。
⇒お返しとばかりに米軍が新鋭艦を繰り出しブーゲンビル夜間砲撃を企図。
そこで連続して海戦が発生するというのが今回の大まかな流れとなっていて、徐々にクライマックスに向かう展開にはやはり引きこまれます。
結論から言えば、今回ばかりは主役である八八艦隊の各艦も健闘むなしく立て続けに喪失してしまうのです。まぁある程度は予想はついていましたが。
それも航空機の対艦攻撃能力の効果が実証されていない本作の世界で、珍しく戦艦以外との戦闘で沈められるのですが、混乱した戦場で傷ついた艦が魚雷を喰らうのは仕方ない。
撤退中の艦が潜水艦の待ち伏せに遭うのも実際あり得る。
以前のシリーズにも度々ありましたが、またしても軽巡が正面切って戦艦と戦い圧倒してしまうのはどうかと。*2
著者が大艦巨砲主義の一方で小口径多砲塔による速射が好きなのはわかるけど、毎シリーズこれが出てくるのはちょっとね…。
一方、予想通り登場した瀑龍は夜間の島影での待ち伏せという限定した戦場で効果を発揮したわけですが、戦争後半には『八八艦隊物語』における「フィリピンの七面鳥撃ち」のような悲劇を再度やりそうな気がしてならないです。


こうして日本側の損失とアメリカ側の建造ラッシュ。次巻で戦力の均衡が破れて戦局が一気に傾くのか、あるいはその流れに逆らうべくポスト八八艦隊である大和級が登場するのでしょうか。
本編5巻で完結した『八八艦隊物語』と違って長くなりそうなので、もう一巻くらい均衡状態が続くような気がします。

*1:人力に頼らざるを得ない設営能力の低さという事情はあるが

*2:前巻の奥入瀬軽巡のように戦艦のサポートとして役立つならわかる