8期・45冊目 『セカンド・ラブ』

セカンド・ラブ

セカンド・ラブ

内容(「BOOK」データベースより)
イニシエーション・ラブ』の衝撃、ふたたび。1983年元旦、僕は春香と出会う。僕たちは幸せだった。春香とそっくりな女・美奈子が現れるまでは。良家の令嬢・春香と、パブで働く経験豊富な美奈子。うりふたつだが性格や生い立ちが違う二人。美奈子の正体は春香じゃないのか?そして、ほんとに僕が好きなのはどっちなんだろう。

今回はネタバレ含みます。




主人公の正明は職場の先輩にスキーに誘われ、そこで春香に出会い恋に落ちる。
良家の令嬢である春香と清らかな交際が始まり、少しずつ距離を詰めてゆく二人。
ある日、正明は春香にそっくりな女性・美奈子を知り、その出生の秘密(双子として生まれたが別々の家庭で育った)を打ち明けられる。
正明は春香を生涯のパートナーにと思いつつも、うりふたつながらまったくタイプの違う美奈子のことが気になってしまう。


ある意味プロローグの結婚式のシーンが物語の行く末を暗示していると同時に疑問を生じさせていますね。
本編の主筋としては正明と春香の交際が一見順調に進んでゆくのですが、プロローグでの新婦・春香に対して、どうも正明は新郎ではなく第三者として描かれているようにしか思えないのです。*1
途中の春香の謎めいた行動も含めて、彼には明るい未来が待っているようには見えない。
正明が美奈子のことを紀藤先輩に話したのを後悔していること、その先輩の動きが怪しくなったことから新郎候補となりうるのかと想像できるのですが、そうすると正明の立場は?
きっとどこかで不幸が待っているんだろうなぁと想像はしていましたが、またしても最後に驚きのオチが待っていたというわけなんです。


実はこれ一回目では意味が分かりませんでした。
春香は霊感があって「見える」体質であることが何度か書かれているのですが、それに対する正明の最後のセリフ「ゴメン、嘘だと思っていた」。
窓越しに外から中に入った正明を「見えてしまった」春香が表情を変えたことから、プロローグ(結婚式)とラスト(新婚旅行か)の時点で実は正明は既に死んでいて*2、幽霊になって見ていることが読み取れます。何度か読み返してやっとわかりました。
正明が春香と美奈子の間で揺れていた裏で、春香の方も二人の男性を両天秤に掛けていたのかなぁと。
それにしても、一人二役のことも含めて春香の行動は不可解過ぎました。そこはあえて謎のまま残したように思えますが。
美奈子が正明に「思い出をありがとう」と置き手紙を残して姿を消した時点で、もしかしたら正明は切り捨てられる運命だったのかもしれませんね。


イニシエーション・ラブ』の衝撃、ふたたび。
とある通り、読む方もあの作品を意識せざるを得ないでしょうが、衝撃という点では劣るでしょう。
ただラストのページですべてがひっくり返ったあの作品とは趣向が違うので、比べてしまうのはやや酷か。
ストーリーとしてもただ後味が悪い内容なんで、あまり良い評価をしづらいのはありますね。

*1:それゆえ途中で何度も読み返した

*2:おそらく振られたショックで自殺