8期・1冊目 『八八艦隊海戦譜 勇進編1』

八八艦隊海戦譜 - 勇進篇1 (C・NOVELS)

八八艦隊海戦譜 - 勇進篇1 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
日本海軍は、トラック環礁を奇襲せんとした米巡洋戦艦部隊を辛くも撃退。だがさらに戦艦一四隻を擁する米大艦隊が小笠原諸島近海まで進撃し、日本本土に艦砲射撃の脅威が迫る。連合艦隊司令長官嶋田繁太郎は総力を挙げてこれを阻止すべく、八八艦隊全艦を以てしての迎撃を決定した。母島沖で機動部隊の漸減を計る伊号潜水艦、上空では日米最新鋭艦戦が激突!零戦の二〇ミリ弾がF4Fを圧倒し、日本軍は制空権を確保。戦艦「土佐」が、長砲身四〇センチ砲搭載のサウス・ダコタ級戦艦に挑むが…。迫真の海戦譜、第二弾。

今回はいよいよ日米両国の主力艦隊同士が激突する、前半の山場とも言える部分でしょう。
前回トラック島沖での海戦の結果、アメリカ側はレキシントン級巡戦が撃沈破されたのに対し、日本側は比較的軽い損害。
押し寄せた米艦隊主力をトラック基地”空城の計”で疑心暗鬼にさせて修理の時間稼ぎ。
そして米艦隊進路上に配置した潜水艦の雷撃によって空母を脱落させるなど漸減作戦も一定の効果有り。
もともと想定していた戦略に則っていたことと、日本側が思い切って前線の島の防備を捨てたことが功を奏して、ここまでは戦略的に日本が有利に進めます。
珍しくアメリカ側が振り回された感がありましたね。まぁそのまま日本有利に進まないのが著者の特徴でもあるわけですが。


また、史実と同様に空母と艦載機を揃えた米軍に対して、日本は祥鳳型(軽)空母に絞ることで数を揃え、艦載機も戦闘と偵察のみ。エアカバーに徹する航空部隊というかたちになっています。
これも八八艦隊を実現させるために削った点として徹底しているようですね。
日本のような貧乏国は戦艦のような金も時間もかかる船よりも、航空に力を入れた方が合理的ではないかと思いますが、そこは著者自身が『群龍の海』でも書いているので、ここはあくまでも徹底した大鑑巨砲主義世界を見守ることにしましょう。


そして制空権争いから始まって、紀伊型・加賀型など8隻の第一艦隊 対 サウスダコタ級戦艦部隊の6隻。それに巡戦8隻(主砲46cmの剣型含む)の第二艦隊 対 コロラド級・メリーランド級など8隻の戦艦同士の砲撃戦という構図です。状況的に日本有利ですが・・・以下箇条書き。

  • 零戦の活躍などで日本が制空権争いに勝ったように思えたけど、結局砲撃戦では関係なかったような・・・。
  • 前者の戦いでは実戦経験あった第一艦隊より米艦隊の方が戦上手に描かれている。これは従来高い砲戦技術を持つと思われていた日本より予算潤沢なアメリカの方が訓練で精度を上げていたということか?
  • 恐ろしき主砲の差。45口径46cm>>>50口径40cm>>45口径40cm
  • ページ数の関係か、巡洋艦駆逐艦の戦いがまったく描かれてなく、最後に米艦隊が突入してきたのが唐突すぎる。
  • GF長官・嶋田繁太郎が意外と冷静沈着にして大鑑巨砲主義に固執せず大局観ある人物として書かれてる。こちらの世界では軍政よりも現場に出ることで変わったのかな?

一応日本側勝利として描かれましたが、『八八艦隊物語』のマーシャル沖海戦のような完勝とは言えず、かなりの損害が出ましたし不安要素も残りました。そのあたりを今後どう生かしていくかですね。


そして西方からの新たなる脅威として、増強されるイギリス東洋艦隊。
最新鋭艦が加わる東洋艦隊に対して、史実の陸攻隊は無く、旧式戦艦主体の日本南方方面軍は分が悪い気もします。比較的早く増援できるのは赤城型巡戦のみ。はたしてどう対処するのか?
続きが気になるところです。