7期・64冊目 『天冥の標4 機械じかけの子息たち』

天冥の標?: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標?: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。
「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。

救世群(2巻)、”酸素いらず(アンチョークス)”(3巻)ときて、4巻で登場するのは”恋人たち(ラバーズ)”。
1巻でも登場しましたが、ラバーズとは大雑把に言ってしまえば、人間に性的なサービスをもって奉仕する老若男女の人工生命体たち。
人工とはいえど、外見どころか内部構造まで人間そっくり(血も涙もある)。大きな違いは老化しないことと、(破壊されない限り)不死であることでしょうか。
元は「大師父」と呼ばれる人物により創り出され、ある小惑星を拠点に自ら<ハムカム>という施設を運営して(性的な目的をもって)訪れる人間を歓待しているという設定になっています。
ある日、宇宙船の事故によって瀕死の重傷を負った少年・キリアンが<ハムカム>で目覚めたところから物語が始まります。


いわゆるボーイ・ミーツ・ガール。
内乱と外敵によるハニカムの危機。そこで救世主(または人質)とされた少年はラバーズの期待にこたえられるのか?少年の過去に何があったのか?そして敵か味方かわからない謎の存在。
キリアンとその相手役として創られた少女・アウローラとは理想のセックスである混璽(マージ)を求めてあらゆるシチュエーション*1で交わるために、全編が執拗なほどエロい展開。さすがに読んでいるこっちが恥ずかしくなってしまうくらい。そこは共同体としてのラバーズの存亡に関わってくる理由があるのですけどね。


人間でありながら宇宙に適応するために肉体改造を施し、国家として確固たる地位を維持するために軍事力を持ち、種族して前向きな強さを誇る”酸素いらず(アンチョークス)”。
それに比べ、技術は優れていても、性愛をもって奉仕すべき使命に縛られ、統率者も無いラバーズは危機克服の面で意外な脆さを持ち合わせている。
唯一それに縛るられないキリアンがどのような役割を果たしてゆくのかがキーとなっているようで目が離せません。多少もどかしい思いはしますけどね。
それぞれが別個の集団の独立した物語のように見えて、きちんと時系列で進んでいてさりげなく登場人物の繋がりも維持しているのがすごいです。
次はどんなお話が待っているのだろうと読めば読むほどワクワクさせられます。

*1:しまいには男女逆転どころか無機物にまで!