7期・40冊目 『宇宙戦争1943』

宇宙戦争1943 (朝日ノベルズ)

宇宙戦争1943 (朝日ノベルズ)

内容(「BOOK」データベースより)
昭和16年真珠湾に突如現れた謎の兵器“三本脚”。その圧倒的な力の前に米国をはじめとする列強の軍は抗する術を持たず、無残な撤退を重ねていた。英国は本土を失い、ドイツ・ソ連は首都放棄という窮地に追い込まれるが、その一方で「奇跡の脱出」を成功させた日米両国が主導して残された兵力を結集、「人類統合軍」として侵略者への反攻作戦を発動する―。日米新鋭戦艦部隊が、反撃の巨砲を撃ち鳴らす。戦記シリーズ第2弾。

前巻『宇宙戦争1941』では世界各地で同時に始まった火星人の侵攻に対して、コテンパンにやられてしまった地球の列強諸国。
このままでは各個撃破の憂き目に遭うのは必至というわけで各国の軍事力を合わせた統合軍の設立を目論みます。
とはいえ、欧州では独ソ戦真っ最中であったために互いに敵意は強く、太平洋では偶発的に日米が民間人避難に協力する機会があるも真珠湾奇襲疑惑が後々影を落とすわけです。


ところで欧州では真っ先に首都が侵略を受けたのに対し、太平洋方面ではこれから戦場となるであろうハワイ・東南アジアが攻撃を受け、なぜ日本本土だけが無事だったか疑問だったのですが、それに関しては電信・電波の使用量という説明がありましたね。*1
ただそういう意味では米本土西岸が侵略受けたのはちょっと不思議な気がしましたけど、ハワイを失った米太平洋艦隊に日本がトラックを泊地として提供するという流れに繋げるためかな。
敵情がほとんどわからないまま戦端が開かれてしまったために統合軍設立に先駆けて専門将校を集めた情報分析部署が立ちあげられます。戦いの現場とは別にその手の将校たちが影の主役的立場になるのが著者の特徴でもありますね。
そこで火星人が蘭印に本拠地を築き、周囲を固めつつあることが判明して、その防衛の一角でもあるフィリピン・ルソンに対して最初の反攻として日米合同の作戦が始まるのですが…。


敗北→同盟瓦解の危機→情報分析によって敵の弱点・対抗手段を探る→再戦・勝利→絆深まり将来の光明が見えた→新たな脅威
オーソドックスな流れですが、こういった空想的な設定においても地についた文章で描くのは著者得意とするところだけに安心して読めましたね。
一つ気になったのは艦隊の至近距離にまで接近したトライポッドに対して戦艦主砲始め撃てるだけの砲を向けて撃ちまくっているのですが、同士撃ちになっていても不思議じゃないよなぁと。まぁそこは当然スルーですよね(笑)


ところで火星人の強力無比な兵器に対して、地球の既存の兵器では対抗難しいのですが*2、今回は様々な手段が編み出されていますね。
FS(フライングスティングレイ)は遠隔操作されていることが判明して電波妨害を行ったり。
FSに対して主力艦戦である零戦・F6Fの銃撃は効果無く体当たりでしか落とすことができなかったが、第一線を退く寸前のP39エアラコブラの大口径砲が有効とわかったり。
きっと兵器体系が史実とは大幅に変わっていくであろうことが今後の楽しみでもあります。

*1:日本は真珠湾奇襲のために軍用電信量が極端に少なく、更にレーダー運用実績がないのが幸いした

*2:トライポッドは戦艦重巡クラスの主砲で撃破可能だが、標的の小ささと動きが一定しないために当てるのが難しい