6期・24冊目 『五三の桐のメロディー』

五三の桐のメロディー

五三の桐のメロディー

内容(「BOOK」データベースより)
落城寸前の大阪城に、時空を飛びタイムスリップした四人の男女が体験する妖しの世界とは…。

宇宙のビッグバンを再現しようとしていた研究所にてアクシデントが起こり、それに巻き込まれた4名(女性一人含む)の技術者は落城寸前の大阪城にタイムスリップしてしまう。
しかし、壮絶な淀君の自害の場面から我々が知る史実とは違ってきます。
淀君の怨念は封じ込められていた銅面婆(妖怪というか邪神のような存在)を復活させ、勝利寸前の徳川方はパニックに陥って崩壊。持ち直した大坂方では、淀君と銅面婆が結託して徳川を滅ぼさんとしていくのです。
タイムスリップした4名は、なぜか千姫と間違われて再び大阪城へ戻された珊瑚、大久保彦佐衛門と見間違えらた雨宮の他は、浪人として真田家に仕えた城と公家の護衛になったフェイ・アラディン(アラビア系の外国人)とバラバラになっていまいます。
それでも服装や言葉遣いに戸惑いながらも乱世ゆえになんとかこの時代で生きる術を見つけた男性陣に対して、有無を言わさず秀頼に犯される珊瑚が悲惨すぎます。


ネタバレしますと、この作品では豊臣は徹底的に悪役なんですよね。現代において日本幕府が続いていて、将軍として豊臣氏が続いているというサプライズ。しかも某半島国家なみの独裁制をしいている。どうしてこうなった。*1
なんだかんだで最初からタイムスリップを目的とした実験のモルモットにされたことがわかり、それ加えて一番酷い目に遭った珊瑚が豊臣を憎むこと甚だしく四人は現代に戻った後に復讐を企て再びタイムスリップするわけです。


史実とは一転して徳川は敗北を重ねてついに関東まで追い詰められますが、大坂の陣に劣らず激しい銃撃戦や攻城兵器が登場する江戸城攻防戦はなかなかの迫力であります。ただ妖怪(妖術)が決め手になってしまうところでガックリ。パラレルワールド(歴史IF)にオカルト要素を入れたものの、中途半端に終わってしまって不完全燃焼ですね。
二度目のタイムスリップによって歴史がどう変わったかははっきり書かれていませんが、ほのぼのとしたラストは良かったです。

*1:現代的なインフラとか街並みなどは普通に書かれているが、それまでの歴史については一切触れられていない