- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/08/26
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
所持金143円、全てを失った男は、深夜のデパートにうずくまっていた。そこは男にとつて、家族との幸せな記憶がいっぱい詰まった、大切な場所だった。が、その夜、誰もいないはずの店内の暗がりから、次々と人の気配が立ち上がってきて―。一条の光を求めてデパートに集まった人々が、一夜の騒動を巻き起こす。名作『ホワイトアウト』を超える、緊張感あふれる大展開。
夜の老舗デパート鈴膳本店にそれぞれの思惑を秘めた人々が集い、偶然が重なって予想外の騒動を巻き起こす。
いわゆるグランドホテル形式の人間ドラマであり、三谷幸喜の映画「有頂天ホテル」のデパート版ともいえそうです。
背景には鈴膳秋浦店が絡む贈賄事件で逮捕者を出し、鈴膳ブランドの名が地に堕ちた上に、その責任を巡る派閥争いがあったりします。
そんな中で行われた創業百年祭は最終日の土曜(残業禁止日)の夜を迎えて・・・。
主な登場人物。
- 鈴膳関係者
鈴膳の再建を図るデパートの若社長
会社に復讐しようとしている女性店員
店内に残って何か画策しているマネージャー
本店の生き字引と称され異動を頑なに拒むベテラン警備員
転職したての若い真面目な警備員
- 関係者以外
家庭も仕事も失い、ホームレス同様の中年男
ヤクザに追われる手負いの元警察官
高校生くらいの家出カップル*1
揃いも揃ってやけに人が良くて見知らぬ他人に親切だったり、妙に縁がある人々が集まったりという都合良すぎる点はまあ置いておいて、これだけの登場人物が鈴膳に絡む人間模様を見せ、そしてそれを収斂してゆくさまを描いたのはなかなか見事だと思います。
デパートという響き。それに消灯後の誰もいないはずの店内という舞台がとても魅力と哀愁を感じさせるもので、それを存分に活かした内容となっています。
ただ、情に訴える部分が多分にあったためか、テンポとしてはイマイチ。シリアスにしたかったのか、ドタバタ劇にしたかったのか、双方の要素があってやや中途半端であったのが残念(おそらく前者であろうとは思いますが)。
*1:彼氏の方は贈賄事件で逮捕された市会議員の子息、そして彼女の方も贈賄事件の関係者であることが後に明かされる