5期・79冊目 『アウトブレイク』

アウトブレイク (新潮文庫)

アウトブレイク (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
動物検疫施設で働くジンボが倒れた。風邪に似た症状から発疹、全身出血を起し、死亡した時には内臓がすべて溶解していた。彼が密輸したオナガザルの受取人、恋人、診察した医師、その女友達、二人が行った映画館の観客…。患者は次々に拡がり、街はパニックに陥った。陸軍伝染病医学研究所のダニエルズ大佐は、音もなく忍び寄る致死率100%の恐怖のウィルスに、果敢に立ち向う。

型破りだが直感と実行力に優れる主人公。かつて同じ医師としてチームを組んでいた妻とは今は離婚したものの、いまなお未練が残っている。そして石頭の上司たちは何やら隠している過去がありそう。
潜伏期間わずか2,3日、致死率100%。アフリカの奥地に閉じ込められていたはずの脅威のウィルスの宿主である猿が人為的要因と偶然が重なってアメリカに渡り、数人の感染者からたちまち多くの死者が続出。まさに死の病気のアウトブレイク(大発生)になってしまう。


エイズにラッサ熱にエボラなど、人類に致命的な影響をもたらす病気はアフリカの奥地から生まれたそうですが、今なお未知のウィルスが存在する可能性は充分考えられます。それがもし人や物の流通が激しい先進国に持ち込まれたら?深刻なパニックが起こることが予想されます。
同名映画の小説版として書き下ろされ、ストーリーは疫病パニックものの王道。ハリウッド映画らしいキャラクター配置にわかりやすいストーリー展開。サスペンスありアクションあり。ハラハラドキドキの末に待っているハッピーエンド。理屈抜きにすいすい読める内容となっています。


読み終えてふと思ったのが、冒頭のアフリカでのキャンプでは医師やまだ生きている病人含めて容赦なく爆撃で焼き払ったけど、米国内であるシーダークリークではすんでのところで救われるってところが、命の価値の違いを感じさせられてしまいますね。それだけに本編では街を焼き払うように命令したマクリントック少将は悪人として描かれているけど、防疫として正しいんじゃないかってのは意地悪すぎますかね。
あと、放たれた猿は人間の生活区域までだいぶ動き回っているけど、シーダークリーク以外では感染者が出ないのがちょっと都合良過ぎるとは思いました。
ストーリー上、一つの町に閉じ込められたけど、突然変異して空気感染力を手にしたヤンキー・モタバウィルスによって、下手したらアメリカ国内いや世界中に広まっていた可能性*1だってあるんじゃないかと想像しちゃいますねぇ。

*1:実際、猿を運んだ貨物船は帰りの航海中に全滅していたが、そのまま戻っていたら・・・