5期・26冊目 『碧海の玉座3 ラバウル沖海戦』

碧海の玉座〈3〉ラバウル沖海戦 (C・NOVELS)

碧海の玉座〈3〉ラバウル沖海戦 (C・NOVELS)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
戦艦「加賀」「土佐」の奮戦で日本軍は米アジア艦隊に大打撃を与え、在比米軍は継戦能力を失った。第三国の陰謀によるタイ国境での武力衝突から半年、ここに日英両国は再び同盟を締結する。その間隙を衝いて米国がガダルカナル島を占領。B17、A 20による英領ラバウルへの空爆を開始した。邀撃するスピットファイア、重火力型ハリケーン!英軍はラバウル周辺に多数のレーダーを配置、鉄壁の防空網を築いていたのだ。英レーダー陣地を攻撃すべく米南太平洋艦隊が出撃。日本海軍第八艦隊が迎え撃つが!?戦記巨篇第3弾。

紆余曲折あった末に日英はがっちり同盟を組み、オーストラリアの英連邦分離を巡って、南太平洋にてアメリカと対峙するという展開になってきました。
史実においてもこの時期(1942年前半)は日米の戦力が拮抗していてなかなか興味深いのですが、舞台は同じラバウルガダルカナルでも、攻める米軍と守る英・日軍といった構図となっています。
史実でもあった、ラバウルからガダルカナルへの長駆攻撃に零戦がその長い飛行距離を生かして護衛するという案を出させてバッサリ切り捨てていますが、これも本シリーズの特色(イギリスとアメリカが太平洋で対立)ゆえ不要になったというのがありますね。
今回は米軍があの手この手でラバウルを航空攻撃、思うように攻略できない原因がレーダー基地にあるとわかると、今度は水上砲撃によって潰しにかかる。実際に描写されている戦闘シーン以外にも裏で偵察や妨害が頻繁にあって、英米が激しいつばぜり合いを行っている様子を匂わせます。
戦力が限られている英軍に協力する日本は戦闘機だけでなく、レーダー基地防御のために戦艦扶桑・山城を含む第八艦隊を派遣するのですが・・・。


横山信義氏の書く日本軍の体質は開始早々は史実と大差ないのがいつもの特徴でもあって、戦略的思考と合理性に欠き、現場の将兵の奮闘を生かせないのが今回も随所に見られました。だいたい海戦が始まる前に指揮官が自信に溢れていると敵にしてやられる予感がしてしまう(笑)
ただ、次の4巻の8月刊行が予定されているということは、このソロモンにおける一連の戦いは2巻分のボリュームとしてできあがっていて、今回終盤で苦境に陥った日英側、特に日本海軍が戦訓を活かし、なんらかの手段をもって乗り切るという筋書きを予想するのですが。
また、同盟によって日本国内でマチルダやクルセイダーを生産するようになり、戦車戦が起こりえることを示唆されてましたが、それは次の次あたりでしょうね。


なお、主人公的役割の須磨4兄弟の次男・秋彦が駆逐艦山雲に乗組み、その激しい戦いぶりを見せているのは壮絶な最後を遂げた史実に関係しているようです。
http://www.c-novels.com/book/2010-05-25-660.html
wikipedia:山雲 (駆逐艦)
有名な雪風は例外として、駆逐艦一隻の戦歴というのはあまり戦記ものではあまり脚光を浴びないものですけど、そういったエピソードを作品に反映させるのは著者ならではの渋い演出ですね。