4期・50冊目 『すぐわかる日本の呪術の歴史―呪術が日本の政治・社会を動かしていた』

内容(「BOOK」データベースより)
呪術がどのように日本の歴史を動かしてきたのかを時代順に1テーマ見開き2ページで解説。原始的なアニミズムにたつ呪術から、現代の風水や各種占いの流行にいたるまで呪術の流れがよくわかる。

図書館で借りてきた、分厚くなくビジュアル多目で軽く読めそうな本その1。
呪術とは日本史の中でどういう経過を辿ってきたのかというのを、古くは縄文時代まで遡って図や写真をふんだんに使いながらわかりやすく解説しています。
現代で呪術と言うと、恨みを抱いた相手をなんとかしてしまうという呪い(例:丑の刻参り)が思い浮かぶんじゃないでしょうか。あるいは『陰陽師』で知られるような呪術者のイメージ?いずれにせよ、現代ではどっちかというと負のイメージで残っている気がしますね。


しかし、近代科学が発達する以前の歴史では、呪術とは目に見えない力をコントロールする術全般を指し、時代とともに様々な手法が生み出されて、時に政治手段であり、医術でもあったというのです。
古代の遺跡からよく出土する人形などは、わざと壊れやすいように作ってあり、体の悪い所と同じ部分を壊すことで治癒を願ったのだとか。


陰陽五行思想や仏教伝来により、新たな技術が導入されて呪術方法も洗練されていくと、国家鎮護のためや権力争い、時には外敵を倒すためなどと様々な目的に使われるようになります。この中で特にページを割いて説明されているのが陰陽師安倍晴明で有名な陰陽道や天台・真言密教であり、その影響の大きさが伺い知れます。
さらに京や江戸は霊的(今でいう風水)に守護されるように都市が建設されたとか。
そういう意味では、近世あたりまで呪術とは個人で行う狭い範囲だけではなく、宗教と融合してかなりスケールの大きな学問として発展してきたといえますね。


その一方で、民間では古来からの自然崇拝(アミニズム)に加えて神道・仏教・道教などの影響を受けたまじない・祈祷の類が広く伝わっていたといいます。
明治になってその多くは文明開化の名の下に破壊されたのだけど、多少かたちは変わっても現代に受け継がれているとか。例えば祇園祭や流し雛(雛流し)*1なんかもそうらしいですね。
占いや風水が一定の支持を得ているのも、目に見えないものを信じる気持ちが今でも残っているせいでしょうか。


本書において、広い意味で呪術とは日本史の中で重要な要素だったことはよくわかります。ただ、テーマがテーマだけに歴史解説が伝説・言い伝えに偏っている*2のはちょっと気になりましたが。

*1:源氏物語」に光源氏がお祓いをした人形(形代)を船に乗せ、須磨の海に流したという著述がある。

*2:三国志は正史ではなく演義のエピソードを引用したり