4期・43冊目 『アウトブレイク―感染』

内容(「BOOK」データベースより)
ロサンゼルスのクリニックで恐るべき伝染病が発生した。頭痛、高熱、吐血、そして死に至る。疾病管理センターから派遣された新米女医マリッサの奮闘によって、伝染病はエボラ出血熱、人間にとってもっとも危険なウイルスが原因とわかったが、過去アフリカでしか流行しなかったものがなぜ突然アメリカで発生したのかは謎だった。時をおかず、第二、第三のエボラが他の都市に現れた。現場へ飛んだマリッサは感染者に何か共通項がないかと調べるうち、奇妙な暗合に気づく。エイズ時代の戦慄をこめて放つ、医学サスペンスの第一人者の最新長篇。

まず作品の中で登場するエボラ出血熱は現実に存在する恐ろしい病気なのですが、有効かつ直接的な治療法は確立されていなく、感染した場合の致死率は50〜89%と非常に高いものの、今まで世界的に広まることはなく、今までの発症はいずれもアフリカ大陸のみであったとのこと。
それがなぜかアメリカの近代的な施設の整った病院で、医師が第一発症者となって突如広まり数十人単位の犠牲を出すものの、短期間で収まる(そこには主人公を始めとする疫学センター職員の活躍もあるのだけど)。それがロサンゼルス、フィラデルフィアなどの大都市で立て続けに起こったりするものだから、主人公・マリッサは経験浅くとも自らの調査結果から不審を感じて調べていくのだが、いくつもの障害にぶち当たる・・・。


医療施設内がメインとなるために医学用語が頻出しますが、感情表現やストーリー展開も自然で非常に読みやすいです。美人ながら背の低さを気にしていて、ボーイフレンドは複数いながらも異性関係には慎重的、だけど仕事に関しては妥協しないマリッサの心境もわかりやすい。たぶん元の文章と翻訳のどちらも良いのでしょうね。
こんな言い方は失礼かもしれませんが、決して特別な力を持っているわけではない小柄で若い女性が、権力や暴力にくじけず最後まで己の信念を信じて孤軍奮闘する様にハラハラさせられて先が気になってしまう。何度もピンチを迎えながらも、機転と勇気を持って突破していくマリッサに惹かれます。*1
それから、今まで敵/味方だと思っていた人物が実は・・・というどんでん返しも用意されているのですが、そのへんは途中で察しがついてしまうのですけどね。


本編と関係ない余談として。
本来は前に人力検索でパニック小説として募集した時に教えてもらった同タイトルの違う小説*2を読むつもりだったのですよ。
しかしamazonで検索した時にこちらが先に表示されて作家・内容をあまり確認せずに注文してしまったのです。
途中でなんか印象と違うなと思いつつも内容的には充分楽しめたので結果オーライでした。ただ、OUTBREAK(大発生)というタイトルはやや内容にそぐわない気がしますけどね。

*1:なんだかんだいって最後はハッピーエンドになってほっとした

*2:作者はロバート・タイン