4期・19冊目 『鋼鉄の海嘯―台湾沖決戦』

台湾沖決戦―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

台湾沖決戦―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

台湾を不沈空母と化し、国家存亡を賭けた一戦に備える日本軍に、闘将ハルゼー率いる空前の大部隊が迫る。最新鋭戦艦五隻、空母十六隻、航空機千機余りを結集した、合衆国海軍史上最強の艦隊だ。満を持して迎え撃つ巨艦「大和」「信濃」、そして大東亜決戦機「黄龍」!果たして、総力を挙げた最終決戦の帰趨は?太平洋の覇権を巡る日米の激闘、ついに決着!!

台湾沖という日本のホームグランドまでアメリカの機動部隊をおびき寄せての日米決戦。戦術的な敗北を繰り返しながらも驚異的な回復力で前回を上回る戦力を揃えてあくまでも馬鹿の一つ覚えみたいに正攻法で進む米軍、個々の戦闘では勝利を収めながらも戦力的な劣勢にたたされて、あの手この手で負けない戦術を考えざるを得ない日本軍。
史実のレイテと台湾沖航空戦を日本がまともな戦力・戦術で行ってみたという感じもあるにはあるんですが、やっぱりパターンですねぇ。


そして、いざ決戦の幕開けとなって、航空戦の消耗→水上決戦、米戦艦の圧倒的な硬さ→戦艦大和辛勝という部分もまたかって気がしないでもないです。戦闘場面が多いだけに省略は多いですが、記述はしっかりしている*1横山信義氏だから読めるというだけで。
でもまぁ、1944年という時期に絶妙なタイミングで零戦が参戦して活躍したり、VT信管も登場して恐ろしく正確性の増した米海軍の対空攻撃力に肩透かしをさせたのは面白かったですけどね。あと著者の一連の作品内ではダメな子扱いだった大和型戦艦の2番艦以降としては珍しく「信濃」が活躍したのも意外だったかも。


著者もあとがきで書いている通り、連合国側の個別撃破を描くはずが、いつのまにか日米戦が大きく占めてしまった本シリーズ。最後は外交面など省略気味で急ぎ足で結末を迎えてしまったのは残念。*2
比べてしまうと浅間シリーズや曙光・牙城の方が面白かっただけに、もうそろそろ日米戦を描くのに限界が来ているかなぁと思わざるを得ないです。
ちなみに最後はドイツがなんとも悪役になってしまって可哀想なのですが、ここはむしろイギリス本土をめぐるアメリカ対ドイツの戦いの方が興味そそられます。
今後ですが、たまにはまったく別の時代にするとか、日本を抜きにした戦いにするとか、題材を変えてみてはいかがでしょうね。*3

*1:誤植は別として

*2:もっとも『修羅の波濤』みたいな和平派 対 抗戦派の内戦をまた書くわけにはいかないか

*3:過去に書いてないわけではないのだけど、出版社の意向として「日本」・「太平洋戦争」は外せないのかなぁ