- 作者: 大石圭
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07/07
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
昔、昔…。春のある午後、少年は森の中で、日にさらされて色褪せた雑誌が落ちているのを見つけた。何げなくページを開いた瞬間、若い女性の全裸写真が視界に飛び込んで来て、思わず息を飲んだ。少年はまだ7歳か8歳だったけれど、そんな少年でさえ、それが普通のものではないことくらい理解できた。幼い少年にとって、それは目が眩むほどの衝撃だった。そして思った。いつか僕もこんなふうに女の人を、と―。
少年時代に目覚めた冥い欲望を本当に実行してしまった青年。現実にはどんなに望んでも、その前に物理的・経済的な壁に当たって心の中で妄想を広げるしかないところを資産家の息子で両親亡き後、広大な屋敷を所有しているという条件が可能にしている。
ホラー文庫ではあるけれど、この著者の他の作品のようにグロもホラー要素はまったくなく、ただの精力絶倫男が女性を監禁してアレコレするエロゲ的展開。ただし淡々と似たような行動を繰り返すだけで工夫が無く、出来としては悪い。
実は主人公には離婚した妻子がいて月一で会っているのだけど、別れた妻が若い男に夢中になって娘を放置している様子を聞いて、急に父性に目覚めて面倒みようと思うところがちょっと納得いかない。それまでまったく無関心であったのに。変態で良き父親という2面性を書きたかったのか。
救いは監禁された女性の心理描写くらいか。それまで普通に生きてきた人間がそう簡単には屈服しないさまはよく書かれている。
そして、物語冒頭で拉致された女性が絶望の中においても夫や子供への想いが断ちがたく、最後の賭けに出て外部への脱出に成功する。
そこで終わっていれば、破滅型のクライムノベルとしてまだましな終わり方だと思っていたのに、結局飼い犬によって妨害され連れ戻されてしまう。このラストは蛇足じゃなかったかなぁ。