4期・9冊目 『不夜城』

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
新宿・アンダーグラウンドを克明に描いた気鋭のデビュー作!おれは誰も信じない。女も、同胞も、親さえも…。バンコク・マニラ、香港、そして新宿―。アジアの大歓楽街に成長した歌舞伎町で、迎合と裏切りを繰り返す男と女。見えない派閥と差別のなかで、アンダーグラウンドでしか生きられない人間たちを綴った衝撃のクライム・ノベル。

愛・友情・信頼といった通常の人間関係において至上とされるものとは一切無縁であり、一貫して騙し騙されの争いを繰り広げる内容にはかえって爽快さを感じます。
だいたい主人公からして、世の中の人間を分けると二つ。カモにするか、されるかだ。そんな信条を抱いているわけで、力よりも舌先三寸で歌舞伎町という油断のならない場所で生きている。古典的ハードボイルドのヒーローとは一味違ってる。
そこに至るには日本人と台湾人のハーフ、そして親からも見離されて、頼るべき血縁・地縁というものを得られなかった幼少時のエピソードが時たま挟まれます。


そういう設定のせいか、ふって沸いた災厄(かつてのパートナーがしでかしたトラブル)のために駆けずり回らなければならない前半部分は冗長的でやや退屈。
後半になってきて俄然面白くなるのは、謎の美女・夏美が登場してから。嘘で固めた過去、言葉は信じられないがその行動には魅せられることの多い天性の女優。イメージ的には峰不二子かな。主人公はルパンほど格好良くないけど。
その二人が組んで、一世一代の賭けを始めたあたりは結構燃えてきます。全てが終わった後に待っているのは生か死か。
結局どうなったかは書きませんが、最後まで変わることなく、この物語としてごく自然な結末なのだろうなと思えました。