12期・29冊目 『どこの家にも怖いものはいる』

内容(「BOOK」データベースより)

作家の元に集まった五つの幽霊屋敷話。人物、時代、内容…バラバラなはずなのにある共通点を見つけた時ソレは突然、あなたのところへ現れる。これまでとは全く異なる「幽霊屋敷」怪談に、驚愕せよ。

時代も場所も内容自体もそれぞれバラバラなのに、読んでみると微妙にどこか似た印象を抱く3話の怪談。
作者自身である三津田信三を主人公にして、元々熱心な読者で編集者、怪談話の収集に関しても同好の士である三間坂秋蔵とその3話を繋ぐ結びつき(ミッシングリンク)を探る内容となっています。


一つ目は新しく引っ越してきたばかりの一軒家で部屋を与えられたばかりの幼い娘が壁の向こうにキヨちゃんという存在がいると言い出した後、仲良くなったばかりの男の子が頻繁に遊びに来ていたと思ったら、いきなり失踪してしまった話。
二つ目は昭和初めに森で友達と遊んでいた少年が割れ女*1に追いかけられて、森を出て晨鶏屋敷に隠れるが、割れ女執念深く追いかけてきて、結局蔵の中で見つかってしまうという話。
三つ目は事故物件のアパートに当たってしまった大学生の恐怖体験。屋根の上で老婆が踊っていた晩にたまたま遊びに来ていた中学生がおかしくなって救急車に運ばれた後、砂利や小石が空から落ちてくるような音が聞こえてくる。大家が言うには、このアパートには子供がいると触りがあるから子供連れの入居はお断りしているとか。大学生は年齢的に当てはまらないはずだが、妙に童顔なので…。


子供が犠牲となっていること、怪異の際には「ジャッ、ジャッ」という奇妙な音がする点が共通点とはなっていますが、それは単なる偶然なのか、あるいは人か物が移動した際に怪異譚として伝播したのか。まだこの時点では繋がりは掴めません。
しかし、三間坂秋蔵が見つけてきたドキュメンタリーとも小説とも決め難い作者自身が体験したという内容の「光子の家を訪ねて」と三津田信三自身が参考資料として入手し、忘れていた私家本より「或る狂い女のこと」が出てくるに至り、怪異の根源が判明し、ミッシングリンクが主人公の考察により明らかになる!といった展開。
様々な出所の怪談話とはいえ、家と女と子供というキーワード以外にどうやって結びつくのか探っていき、やがて推理は一つの結論へと辿りつく。そんな展開がどことなく小野不由美残穢」に近いです。
それぞれの話にはそれなりの怖さは感じるのですが、淡々としすぎて個人的には恐怖は薄かったです。
奇妙な偶然の一致とか、時代を超えて祟りが蘇るとかっていかにも怪談らしくて興味深い点はありますが。
最後の考察は多少強引さ*2はあっても、充分面白くて納得はできますね。
場所が関係するようなので、”そこ”に行きさえしなければ大丈夫だと思うのですが…。
あと、表紙はハズレですね。人を持ってくるより、文庫版『黒い家』のような暗くて不気味さを感じるイラストの方が良かった気がします。

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

*1:顔が縦に裂けている女。最初は口裂け女みたいな存在かと思った。

*2:確かめようがない部分もあるので仕方ないか