3期・53冊目 『鋼鉄の海嘯 南洋争覇戦1』

南洋争覇戦〈1〉鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

南洋争覇戦〈1〉鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

日本軍の極東ソ連制圧から一ヶ月余、アメリカ合衆国が日本に宣戦を布告。巨大な敵と対峙することとなった日本は、南洋資源地帯を確保すべく、蘭印と内地の間に居座る在比米軍の攻略を図る。だが敵主力のB17部隊を捕捉できず、逆に米軍の総力を挙げた「三つ叉の槍(トライデント)」作戦により、トラック泊地、さらにはパリクパパン油田への侵攻を受ける。第一艦隊旗艦「大和」の反撃や如何に−!?

ついに始まった日米戦。史実より10ヶ月遅れだけど状況的には泥沼の日中戦争がなく*1)、英ソ脱落によりドイツとの交流の強化があって技術的に多少有利。またいつものネタだけど、人命重視、陸海軍協力、情報収集強化といった当たり前だけど史実では軽んじられた要素が見られます。*2
オーストラリアのみアメリカ寄り中立となっていますが、本当に日米のガチンコ勝負という様相なんですね。そこでアメリカ側はオレンジプラン、日本側は漸減作戦の上での艦隊決戦というオーソドックスな形になるのかと思いきや、本作で博打を打ってきたのはアメリカだった・・・。またしても腹黒ルーズベルトかっ!


つまりは最初からやる気まんまんのアメリカ軍に対して、日本軍がどう守るかが見物となっているわけです。
要衝トラックでもなくフィリピンの救援でもなく、蘭印のパリクパパン油田を叩くという意外だけど実は日本の急所を狙った作戦。成功すれば充分効果が見込めるという米軍側の記述もあります。戦力に比して守備範囲の広い日本にとっては厄介な話なんですね。陽動作戦に振り回される日本軍ですが、途中で敵の狙いに気づくのが井上成美提督というのが面白いかな。
そこで日本の切り札は一五試艦戦⇒制式採用「天風」(紫電改のエンジン1500馬力バージョンって感じ)ですね。今回は零戦よりもこれの活躍につきるかな。例によって空戦シーンが迫力有り。
そして相変わらずやきもきさせる戦艦同士の戦い。横山信義氏の書く戦艦大和はやればできる子なんだけど、本領を発揮させるまでが毎度苦労するようです。むしろ扶桑・山城・伊勢・日向がよく頑張った!


日本から手を出したわけではなく、偶発的な事故(表面上は)による戦端を開いたので、アメリカ国内やら大西洋方面の状況(英海軍戦力を吸収して数だけは増えたドイツやさほど損害が出ていないはずのイタリアがどう出るのか)は今回は触れていないのですが、それは次巻に期待ですね。まったく触れられないまま進むこともありえそうだけど。

*1:前巻までで対ソ戦は局地戦の勝利と相手方の内部崩壊によってほぼけりがついている

*2:これは参謀が主人公クラスという近年の著者の特徴か