- 作者: 小松左京
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 1998/01/01
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
MM‐八八菌―実験では、摂氏五度で異常な増殖をみせ、感染後五時間で九十八%のハツカネズミが死滅!生物化学兵器として開発されたこの菌を搭載した小型機が冬のアルプス山中に墜落する。やがて春を迎え、爆発的な勢いで世界各地を襲い始めた菌の前に、人類はなすすべもなく滅亡する…南極に一万人たらずの人々を残して。人類滅亡の恐怖と、再生への模索という壮大なテーマを描き切る感動のドラマ。
かつて人力検索はてなでパニック小説を募集する直前に、書棚から取り出して再読始めたのですけど、お薦めの本を優先したためにしばらく中断。9月になってようやく読み終わりました。
核兵器の廃棄条約締結に向けて世界が対立から対話へと向かっていたその時、宇宙からもたらされて数奇な運命を辿った特殊なウイルスによって人類滅亡の危機に・・・。
春の訪れとともに新型インフルエンザが世界的に流行、同時に鳥インフルエンザも流行って鶏がバタバタと倒れてしまい、のっけからワクチンによる防御体制もままならない。
人々は「たかがインフルエンザ」とたかをくくっているうちに、異常な罹患率と死亡率によって学校で会社で櫛の歯が抜けるように人が減っていってしまう。あらゆる職場で人手不足が目立ったり、いつもならばぎゅうぎゅうに積込まれたラッシュ時の満員電車がスカスカになってしまった、という描写が特に象徴しているように思います。
主な舞台の日本では、表立って暴動などのパニックは発生しないものの、誰も彼も不安を抱えたまま病厄が過ぎ去るを待っている、そのあたりが妙にリアルです。
かつて現実にもSARSや鳥インフルエンザの流行によって、恐慌じみた騒ぎがあったことを思うと、フィクションとして笑い飛ばせないですね。
マスコミを通して知るだけの世間の出来事が、次第に「まさか」・・・「ひょっとしたら」と己に降りかかってくる、そんな恐怖も感じます。
更にこのウイルスの恐ろしいところは、インフルエンザのウイルスに乗って(?)体内に入るとある作用の後に消滅してしまうのですが、最終的に心臓発作を引き起こし、死に至らしめるということ。*1
そのために老人・子供だけでなく、健康体の大人が数日で急死する例が続出。医療や警察・交通機関さえ麻痺し、社会が成り立たなくなっていく様は何とも言えない。まるで死病に冒され、徐々に衰えて死に近づいている病人のようです。
死に覆われた世界の中で、生き残ったのが南極の人々。
一転して、厳しい環境の中、国籍を超えて人類の再生のために協力しあっていく様が感動的。
ウイルスに覆われた世界がどうなっていくのか、南極に閉ざされた人々の運命は・・・?
そのへんは最終的に明かされるタイトルが意味深ですねぇ。
*1:うまく説明できないのですけど