2期・61冊目 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

商品の説明より
長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。そんななか、火星で植民奴隷として使われていた8人のアンドロイドが逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。人工の電気羊しか飼えず、本物の動物を手に入れたいと願っているリックは、多額の懸賞金のため「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのだが…。

唐突に始まる異世界の話にいつの間にかはまりこんでしまう。『高い城の男』でもそうでしたが、フィリップ・K・ディックの作品にはそんな持ち味があるようです。さりげなく触れられる小道具だったり、具体的すぎる動物ビジネスだったり。そんな設定が巧妙に効いているようです。
何より本物の動物を飼うことがステータスという発想が面白い。*1
記述から想像するに、機械仕掛けより本物の動物の方がその希少性から50〜100倍くらいの価格らしいです。


主人公・リックは本物の動物を飼うため、そして職業的なプライドをかけてアンドロイド狩りを始めるのだけど、予想以上に優れた知性や感性、向上心・執着心といった人間と殆ど変わらない実態に触れて、金のために仕事をこなしながらも悩み、挫折を経験する。
人間がアンドロイドに愛情さえ抱き、違いと言えば不合理的な感情(死者に対する追悼など)しか無くなってしまうとなると、この世界における人間の立場って何なのでしょうね。
もっともアンドロイド同士というのは目的のために他者を利用するだけと書かれていて、決して人間のような複雑な関係は無いので、その辺で一線を画しているようです。
ラストでレイチェルがやったことに、より人間らしさを感じたのは気のせいでしょうか。

*1:現実にも珍しい動物を飼う趣味の人が結構いるらしい。飽きたら安易に捨ててしまって問題を引き起こしていますが