10期・40冊目 『大聖堂(中)』

内容(「BOOK」データベースより)
本院の修道院長となったフィリップに任命され、トムが大聖堂建立に着手する日がやってきた。トムの緻密な計画のもと、大聖堂の普請は着々と進んでいった。が、新しいシャーリング伯となったハムレイは、フィリップに敵対する司教と組み、執拗な嫌がらせを仕掛けてくる。自領に比べてキングズブリッジの繁栄に嫉妬したハムレイは、やがて町に焼き討ちを。

石切り場をめぐりシャーリング伯との確執を残すもキングスブリッジ修道院の財政を立て直しつつあるフィリップ。そして彼の信頼を得たトムは棟梁として大聖堂建立にまい進します。
一方、獄死した父との誓いで弟リチャードを騎士にさせてシャーリング伯領を取り戻すためにアリエナは羊毛商として生計を立てるようになり、その才能を発揮して商いは成功していました。
石工としての才能を発揮するようになったトムの義息子ジャックはアリエナに対する思慕が募るばかり。
大聖堂建設に関連して人が集まり、村から町へと繁栄してゆくキングスブリッジに対して、シャーリング伯ハムレイは武力的手段をもって押しつぶそうとするのでした。


不遇をかこった上巻とは打って変わって、大工の棟梁として才能を発揮するトムの活躍が目覚ましいですね。
単に技術だけでなく、わかりやすい設計図や説明によってフィリップや視察に訪れた司教の心を掴み、着実に建設が進んでいきます。
建設事業によって人が集まり、キングスブリッジも発展し、全ては順調にいくかのように思えました。
しかしそこに待ったをかけたのが物語上の最大の悪役ウィリアム・ハムレイ。
羊毛市場を奪われてしまった(彼の苛政が原因の一つでもあるが)腹いせに白昼堂々と軍勢を率いて市場に焼き討ちという暴挙。
そのせいで多数の死者けが人が出たり、倉庫の羊毛を焼かれたアリエナは全財産を失うことに。特に痛かったのが棟梁トムの死でありました。
建設自体は息子のアルフレッドが継いだのですが、エリンが明かした実の父親の件やアリエナの件*1もあって、ジャックとの関係がギクシャクしてフォリップの仲裁でジャックが修道士への道を歩むもうまくいかなかったり。


上巻と比べるとかなり動きのある展開となっていて、長い内容ですが全く飽きさせません。
キングスブリッジの教会建設を巡る人間模様に惹き込まれます。
特に後半のメインキャラクターであるジャックとアリエナにとっては試練の時が続くように思えます。
その分、下巻にどのような発展が見られるのかが楽しみでありますね。

*1:以前からアルフレッドが求婚していた