亡き友を思ふ(前)

高校に進学した時、同じ中学出身の男は私1人であったせいか、最初だけちょっと寂しい思いもしたが、すぐに友人ができた。辰郎(仮名)も高校1年の時に同じクラスになって、友人になった一人だった。


昔でいう不良というわけではなかったが、同時に真面目にも程遠かったので、よく学校サボって街をブラブラしたり、麻雀やパチンコやったりする仲間がいて、その中でもなぜか私と妙に気が合うのが辰郎だった。そう言えば煙草を日常的に吸うようになったのもこの頃からだ。


高校3年間を通じての辰郎は、仲間内ではよく冗談を言って笑わせることもあったが、控えめで非常にシャイな性格でもあったせいか、女子にはあまり縁が無かった(私もあまり人のこと言えない)が、その代わりに男の友人は多かった印象を当時は持っていた。


何とか高校を無事卒業できた私ははっきりした目的もなく、ただ文系の大学を目指して予備校生活に入った。辰郎とも同じ予備校に通うということで、最初の頃はまたしてもサボってゲーセンに行ったりしていたが、夏になる前に彼は進学を断念した。


結果的に何とか1つひっかかることができて春から大学生になれた私やそれぞれ別の道を歩み始めた仲間達と違い、特にやりたいことが見つからず、なし崩し的に家業の手伝いをするしかなかった辰郎は、この頃から自分自身の進むべき途について悩みをかかえていたのだろう。


その後進学・就職と別々の途を歩み始めて、前にみたいに頻繁に会えなくなってしまったが、夏休みや年末年始という時期を使って、最低でも年に1度くらい麻雀や飲み会といった名目で会うようにしていた。そんな時はたいてい辰郎の家を使わせてもらっていた。1年ぶりに会っても男友達というのはさほど印象が変わらないし、辰郎も例外ではなかった。5年くらい前に彼が激ヤセしたときも、それまでぽっちゃりしていた体型だったから、「痩せて良かったな」と言っていた私は後から思えば何と言う鈍感さだったのだろう。


年に一度は集まるのは、それぞれ結婚して家庭を持ったり仕事が忙しくても何とか続けられたから、これからもずっと続くものだと勝手に思い込んでいた。
それが3年前に唐突に破られた。新年早々に集まって麻雀をやろうと約束していたのだが、辰郎が高熱を発したのだ。
今回は取りやめにする連絡の時、「去年は俺がビリだったから、今年はリベンジしてやろうと張り切っていたのに残念だよ・・・」
それが彼の声を聞いた最後だった。また会おうって約束していたのに。