7冊目 司馬遼太郎『街道をゆく(1)』

街道をゆく (1) (朝日文芸文庫)
司馬遼太郎の小説はかなり読んだつもりだったが、迂闊にもこのシリーズはまだ未読だったことに気づき、たまたま会社近くの書店で司馬遼太郎フェアを開催していたので、手にとってみた。


そう言えば学生時代はよく旅行したが、金は無くとも時間はあったので、たいてい青春18切符を使って鈍行列車に乗ってのんびり行ったものだ。
地方の駅で待ち合わせ時間が2〜3時間もあったりすると、食事がてらその街のや歴史資料館や史跡を巡ってみたりするのが楽しい経験だった。
こういう本を読むとまた旅行に行きたくなるなぁと思って、まぁその通り予想は当たったのだが。


筆者は大和(竹内街道)にて建設ブームによる自然破壊を嘆いているが、同時に山々の美しさや森の中に神々しさを感じることが可能である。
書かれた時代が昭和40年代である。まだまだ日本らしい風景がかなり残っていた時代なんじゃないだろうか。今、同じ街道を辿ってみても移り変わりは一層激しくなっているはずじゃなかろうか。


本作で辿っている街道の中でも好きなのは甲州街道。関東者だけに地元に近いせいか。
武蔵国は今と逆に西が国の中心(府中とか国分寺といった地名が残っているのは名残か)で、今の都心である東側は見渡す限りの湿地帯で集落もまばらであったわけだ。
秀吉の一言で家康が江戸に移ることなって、現在の東京の基礎ができたと思えば、歴史の面白さを感じる。
長州路では、話題に欠かさないだけに話も脱線しがち。主に長州人についての話題が中心であるが、「武」ではなく「文」に頼らざるを得なかった津和野の地勢的な理由による章も興味深い。